丸山(離山)の項を書いたときに丸山(離山)が小夜戸山になったのは“新ハイキング誌で何方がか適当に命名したものが罷り通ってしまったのではないかと思います。”と書きました。
小夜戸山でない証拠に山田郡誌の記述を引き合いに出しました。“丸山(離山)福岡村大字小平の東北部勢多郡界に峙立す。高さ1,064米、嶺上三分し東方は梅田村大字高澤に属す。北方は勢多郡東村大字座間に属し東方の支脈は鳴神嶽に連互す。山中樹木を生ぜず。登路一條、同村大字小平字大荷場より上る十六町四十三間。渓水一流は小平川の上流なり。”

新ハイキング誌で初めて1064.4mの三角点峰が小夜戸山と呼ばれたのは1995年2月号に掲載された小倉孝康さんの『小夜戸山と鳴神山』ではないかと思います。記事の冒頭に“群馬県吾妻村と大間々町の境に1064.4mの峰がある。同じ山でもエベレストとチョモランマの山名のように、この峰も小夜戸山とも小平山とも呼ばれている。東村側の山名小夜戸山(仮称)を使用する。”と書かれています。小平山にはおびらやまとルビが振ってあります。記述を目にして拍子抜けがしました。仮称です。裏付けがある話かと思っていましたので。掲載してある略図では丸山(離山)から石祠のある丸山赤城山までを小夜戸山とされています。これはちょっと乱暴で登ってみると明らかに別のピークです。

次に小夜戸山が現れるのは、大きく跳んで新ハイキング誌2007年4月号(他にも取り上げられているかもしれませんが)、後藤信雄さんの『小夜戸山と駒見山』です。冒頭に“小夜戸山は、渡良瀬川の支流小平川の源頭に位置する山で、わたらせ渓谷鐵道の走る東村(現・みどり市)西部に小夜戸の地名を見つけることができます。”と書かれています。仮称から12年、小夜戸山が定着してしまったようです。西に小夜戸の集落はありますが、かなり離れています。

というわけで、丸山(離山)が小夜戸山になるべく、特別の理由があるわけでなく、急迫差し迫った必要性もなかったようです。「オッサンの山旅」さんは、十二時山の案内で小夜戸の集落から登った800mの山を小夜戸山と呼んでいますが、そちらの方が小夜戸山に相応しいようです。

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