蕗平沢

増田 宏 

 前日光山域ではヒノキガタア沢が代表的な沢であるが、それ以外で唯一沢登りの対象になるのが蕗平沢である。山仲間のMさん、Oさんと大芦渓谷の蕗平分岐に駐車して蕗平沢を遡行し、夕日岳から夕日岳新道を下って周回した。前夜は近くにある大芦渓谷ヒュッテに泊まるつもりだったが、大人数の先客がいたので古峰ヶ原ヒュッテに変更した。蕗平沢は地形図では小沢に見えたが、千bの標高差があり、丸一日がかりの山行となった。

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ヒノキガタア沢・蕗平沢概念図

 蕗平集落は廃村になり、集落跡しか残っていない。30分ほどで林道が崩れて通行できなくなり、すぐ先で右岸支流を分岐する地点から沢に降りた。堰堤を越えると右岸支流が分岐する。ここは大きく崩壊して岩壁が剥き出しになっている。5bナメ滝、3b滝を越えると7b滝となる。この滝は足場が豊富で右を快適に直登できる。その先に豪快な7b滝が現れる。右壁を直登するが、上部は岩が脆く剥がれ易いので注意を要する。同行の2人は左を巻いた。この先で標高750bの二俣になり、左の本流に入る。ナメ滝を越えると岩壁に囲まれた6b滝が現れた。直登不能で左から高巻き始めると溝に出る。朽ちた古い丸木橋が掛かっており、対岸には細いロープが固定されているが、溝を下って落口に出た。この踏跡は炭焼きの道らしく、付近には炭焼き窯が残っていた。
 ナメ滝を越えると垂直の7b滝が現れる。直登は不可能なので右の分流伝いに越えた。直登不能の15b滝は右を大きく高巻く。小さなナメ滝を越え、支流を次々に分岐する。いずれも水量が多い本流を辿ると水がなくなって源頭の様相となった。濡れた涸棚を登り、斜面を登り詰めると笹原となって稜線に出た。三つ目の東に出たつもりだったが、後で地蔵岳の北鞍部に出たことが判った。稜線の登山道を辿って夕日岳山頂に立ち、夕日岳新道を下って駐車地点に戻った。蕗平沢は滝が連続するヒノキガタア沢に比べると遙かに容易であるが、標高差が大きいので時間がかかる。

 夕日岳新道
 前日光山域で最も登りごたえのあるのが大芦渓谷からの夕日岳で、標高460bの蕗平分岐から山頂(1526b)まで標高差1060bを有する。前日光の黒戸尾根(甲斐駒ヶ岳)ともいうべき尾根で一時期、夕日岳新道が開かれたが、辿る人が少なく、廃道になっている。前日光の軽いハイキングコースと考えて慣れない人が安易に踏み込むと大きな標高差と針路選定に思わぬ苦労を強いられるかもしれない。下り始めは明瞭な踏跡が付いているが、地形図に表示されていない登り下りが多く、踏跡が不明瞭な部分もある。岩場や山腹を巻く箇所があり、必ずしも稜線伝いに道が付いていないので注意が必要である。906bの三角点から下った標高800b付近から南寄りに山腹を下る箇所は針路選定に細心の注意が必要である。以前にもこの道を下ったことがあり、前回は全く目印がなく針路選定に苦労したが、今回はところどころ目印のテープが木に付けてあったので注意すれば辿れる。尾根の下部で古い作業道が合流するが、作業道を辿ると蕗平集落跡に出てしまうので、忠実に尾根を末端まで辿った方がよい。尾根の末端には祠が祀られている。

 2013年10月6日
 蕗平分岐(40分)蕗平沢(4時間20分)稜線(25分)夕日岳(2時間50分)蕗平分岐

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7b滝右を直登 7b滝と3b滝
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7b滝右を直登 6b滝左を高巻く
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6b滝近景 7b滝右を巻く
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15b滝右を巻く 涸棚を登る
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夕日岳山頂 夕日岳新道上部の岩場

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