日本の名峰

はじめに

 「日本の名峰」と銘打ってはいるが、NHKの同名番組に登場する山や「日本百名山」を辿るつもりではない。むしろそれら世間の「百名山」などと一線を画すものとなるだろう。

 以前、「日本百名山」といえば深田久弥の著書を指したが、いつの間にか意味が転じて本に取り上げられた山を指すようになり、今や百名山巡りは代表的な登山形態になっている。
 山の歴史や文学を語った深田久弥の「日本百名山」は若き日の愛読書であり、この本によって私は日本の山を知り、山への憧憬を募らせた。初めて読んだ高校生の時、日本各地の山を歩き、いずれその集大成として自分の名峰を選定してみたいとの思いを抱いた。
 しかし、以来四十年、私の山登りは名峰巡りには向かわず、地域研究と未開の山域を志向することとなった。私は季節と登路を変えて同じ山を登ることが多く、百名山を選定できるほど日本の山を広く歩いてはいない。私の足跡はせいぜい関東甲信越周辺と北海道くらいであり、百名山を選定する資格はない。また、現在はそのことに意義を感じていない。

 ここでは他人に追随しての百名山巡礼や自家版の百名山選定ではなく、自らの視点・興味からこれまでの経験を日本の名峰として書き綴っていきたい。

増田 宏

日本の名峰目次

知床岳
幌尻岳
武尊山
白砂山
筑波山
越後駒ヶ岳
天塩岳
白砂川
十勝岳
羊蹄山
金峰山
阿寒岳
苗場山
四阿山
日高山脈北端
日高 ピパイロ岳、伏美岳
日高 チロロ岳、ペンケヌーシ岳
日高 アポイ岳
奥利根・赤倉岳
ニペソツ山
燧ヶ岳
オプタテシケ山
ニセイカウシュッペ
漁岳
石鎚山
暑寒別岳
清津川本流
魚野川本流
甲斐駒ヶ岳
日高山脈南端
常念岳
針ノ木岳
榛名山
両神山
焼岳

『回峰 日高・白神・アンデス・アルプス』  増田 宏 

日本図書館協会選定図書
雑誌「山と溪谷」書評
確固たる登山観に基づく記録性の高い紀行集

回峰 1953生まれの著者が、「天命を知る」という50歳を機に、自己の山の足跡を綴った一冊。
 少年時代、渡良瀬川源流の足尾山塊に始まる山めぐりは、やがて、日高山脈の残雪期全山縦走や白神山地の源流遡行など、未知なる世界へ大きく移行する。80年代以降、「日本百名山」を中心とした登山ブームが再燃するなか、著者は独自の進路を海外の山にも求め、アンデスや中央アジア、アルプスの高峰群へと飛躍する。
 雪や岩に確かなステップを刻むように、大冊345ページに綴られた紀行・記録・論考・随想などの文章が、飾り気なく小気味いいリズムで淡々と展開される。三十数年にわたる著者の登山活動を見ると、山への指向性は明確で、粘り強い一徹なこだわりが感じられる。ことに夏冬通じての日高山脈の登山記録には、確固とした執念が感じられ、それは、やがてアンデスやアルプスの山群めぐりに発展する。
 早くから世上の登山傾向とは一線を画した本格的な山への取り組みは、著者自身が時間をかけて醸成した、力みのない「回峰」そのものであり、行き着くところ、足尾山塊に回帰するような気がする。

(藤原優太郎・山岳ライター)

『回峰 日高・白神・アンデス・アルプス』目 次 

  1. 日高山脈
    残雪期の全山縦走、厳冬期の日高山脈、夏の日高山脈
  2. 白神山地
    赤石川、追良瀬川、粕毛川、滝川
  3. 中央アジア
    世界の尾根パミール、パンジャブヒマラヤの旅
  4. アンデス
    ペルーアンデス、ボリビアアンデス
  5. アルプス
    モンブラン山群、ヴァリス山群、ベルナーオーバーラント山群
    ベルリナ山群、チロル
  6. その他紀行・記録
    北海道、関東甲信越
  7. 論考・随想
    羊蹄山山名考、足尾の山回想

白山書房 A5判 345ページ
3150円を特価2500円(送料、郵便振替手数料込み)
連絡先 増田 0277−53−1903


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