2007年5月に掲載した太田水道山の項に、正体不明の標石を掲載して、ご存知の方お教えくださいと書きました。ちょうど一年ぶりにクタビレ爺ィさんを経由して、埼玉県在住の標石研究家のT沢さん(当サイトの決まり事として、匿名にすることをお許しください。)から、連絡がありました。
標石に“宮の刻印がされておれば、明治時代に御料林とされ皇室所有の土地としたときの標石です。宮マークは御料局の印しで、山田郡と新田郡は境界を印した表示です。”
宮マークとは表題に示した、宮の字をデザイン化したもので、多分あちこちの山で目にしていたのですが、今回初めて認識しました。宮マークのついた標石は『宮標石』と呼ばれていることも知りました。また『山』と刻まれた標石は図根点と境界標であることも知りました。山でであう事物のバックグランドを知っているとなにか得をしたような気持ちになり、一つ蒙が啓かれました。ありがたいことです。

もう一つ正体不明だった標石もT沢さん(当サイトの決まり事として、匿名にすることをお許しください。)にU西さん(当サイトの決まり事として、匿名にすることをお許しください。)の『三角点の探訪』というサイトを教示され、その“利根川上流右岸”の項に、同様の標石が紹介されていました。明治時代、全国に数カ所の土木監督署が置かれ、関東地方は第一區になっていたようです。『三角点の探訪』によると、この標石の“典型的な形としては一辺15、高さ30cm程度の花崗岩の角柱で上面には球分体があり側面には「基標 No.××」(×は数字)、「埼玉縣」「B.M.」(ピリオドは刻字が薄く不詳のものあり)の刻字と几号の刻印が見られますが、”とあります。第一區土木監督署とNo.4の刻印は認められましたが、B.M.や県名はありませんでした。上面に球分体があり、県名があるという標石は足利市の岩井山の山頂で見たばかりですが、ナンバーやB.M.などは確認していません。(2008/5/29 岩井山山頂の標石もT沢さんから宮標石であると言う連絡がありました。岩井山の項をご覧ください。)

鞍部の標石 宮マーク 側面に薄く漢数字が見える 中八王子山山頂 宮マーク
側面に漢数字 第一區土木監督署 No.4 上部は境界の方向を表わす線

上記の標石は、宮マークの記されたものと、第一區土木監督署は中八王子山の山頂。新田郡、山田郡の境界標石は中八王子山と大八王子山の鞍部にあります。

2008年5月14日 『三角点の探訪』の主宰者から以下のご教示がありました。ありがとうございました。
●写真の6画像のうち右上の「中八王子山山頂 宮マーク」以外はすべて境界標で正式には「界標」と呼ばれているものです。「中八王子山山頂 宮マーク」は他の面の刻字がわかりません。
●上面に折れ曲がった線が刻印されているものは境界の方向を表しており測量では「節点」とされることがあります。
●宮マークのある標石は旧御料局(皇室)のものです。戦後、宮内省から農林省営林局へ所管替えになりました。
●球分や「BM」があるものは水準点で河川関係の測量に使われ、山間部では稀です。

ご教示ありがとうございました。これから標石を見る目が違ってくることでしょう。先年は、枕状溶岩の愛好家の方からご連絡を頂き、岩を見る際の目安が増えました。本当は何も考えずに、ぼ〜と、歩くのが好きなのですが。

楚巒山楽会代表幹事

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