山の紀行

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*ひどい方向音痴で、山の中で地図を見ても自分がどちらを向いてどこにいるのか皆目見当もつかない、という山を歩くには致命的な欠陥を少しはなんとかしたいとこの一年思い続けていました。で、遅ればせながら文明の利器を入手。早速見様見真似でコース設定、代表幹事が見つけられなかった引田山の三角点が今回の目的です。

小松山の石祠から出発するつもりでしたが、石段を登り出す手前に沢沿いの道を発見、この石段には苦い思い出があるのでこちらの巻き道を選びます。左手に尾根が近づき、道形が曖昧になってきたあたりで本来辿るつもりだった尾根に上がります。まだまだ枯れ草色が勝った稜線には踏み跡が認められ、少うし緑がかってきた下草の中にはスミレがあちらにもこちらにも花を開いて、足を降ろすと踏んでしまいそうです。
07年に極楽とんぼさんが歩き、一昨年代表幹事が辿った道。昨年はひとりで、上からこの尾根を下っているつもりで迷いに迷い、泣きながらとんでもないところに下り着いた思い出もあり、けれども今日は久々の上天気、思い出に耽ってばかりはいられないほど気持ちのいい山日和です。

忠実に尾根の踏み跡を進めば開いたばかりのミツバツツジがあちこちに初々しい。今日の暖かさが続けばもうすぐピンク色の斜面になるでしょう。一気に下の集落が小さくなり、向いの鳴神山脈の支尾根には所々に仄白い桜が目立ちます。右手に雨降山の特徴ある稜線がどんどん近づき、薄れかけた赤ペンキが二カ所ほどありますが、ほとんど人の歩かない柔らかな雑木の道です。
仙人ヶ岳への縦走路に飛び出せば正面の杉に赤く丸印、足元には何の標識かコンクリートの柱が埋め込んでありますが、繁茂期は上からこのルートを探すのは難しいかも。

左方向に植林と雑木の稜線を進むとすぐに引田山です。右手は広く伐採してあり黒川を挟む稜線が重なって、広い殺風景な林道がすぐ下まで延びています。引田山山頂は倒木が片付けられ、埋もれていた三角点は新しい白い標識を従えて石で囲まれていました。昨年秋にはもさもさしたピークだったのに、今は三角点の少し先が明るく広げられていて一服にはもってこい。ただし眺望はあまり開けてはいません。
しばらくぼうっと太陽を浴びて雨降山に戻ります。杉林の中に入れば涼しいと感じるほど陽に炒られて、フリースもジャンパーも脱いで腰に巻き付ける酷い格好ですが幸い誰とも会いません。

雨降山直下まできている林道をしばらく散歩して久しぶりに東屋へ。ノートには毎日色んな方が書き入れていて、観音山からこの東屋まではほんとうに歩くひとが増えました。ボランティアの方たちの整備も行き届き、あちこち自費で作られたいう木のベンチなども増えています。けれども行政がなにもしないものだから、あるいは「展望の丘」なんてつまらない名前をつけるものだから、なんとこのあたりを舞台に不思議なお話が進行中。
馬鹿馬鹿しいので載録はしませんが、民話風のお話(しかも続き物です!)がしっかりした板に書かれていて、この下の小さなピーク達にはむず痒くなるような名前がつけられています。大きな板を運び上げ、あちこちに設置するその熱情には敬意を払いたいけれど、このお話には余り魅力がありません。まあ大丈夫でしょうが、このあたりが間違って第二のトトロの森になることがないよう祈ります。

舗装道を下山コースに選び、桐生川の土手をふわふわと歩き出発点へ。土筆はもう伸びきって、女子高そばの土手の桜は満開、柄杓山は薄いピンクになってきました。
文明の利器、なかなか便利です。

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