雨降山〜一色山周回

*地図を眺めているのが好きで、筆者が歩けるのはだいたい稜線だけなんですが、それを横切る破線や、麓からほんの少し入るだけでどこにも行き着かない破線や実線が気になります。稜線を横切るのは峠道や今は道形が消えたかつての峠なんでしょうが、行き着くところがないものはたいていが林道や作業道。歩いてもさして面白くないかもしれないけれど稜線ぎりぎりまで続いて消える道は何か気になる。
金葛の展望台下から延びる作業道と林道を散歩がてら歩いてみました。

出発点はいつもながらの金葛入口からですが、このあたりの道路沿いの斜面の山ツツジが今年はとてもいいです。まだ若い緑の間にこぼれるように咲いていて、こんなに山一面が鮮やかなのは初めて見ます。
舗装道を上がり本日は真直ぐに山道を登ります。葛籠折れの続くあたりから稜線に近づくにつれ、特に右の斜面は美しい。ずっと奥まで華やかな色が潜んでいて登り切るのが惜しいような気になります。
展望台を越え、雨降山の分岐を左に見送って作業道を進めば、昨年の火事で燃えた杉林がすっかり伐採された斜面へ出ます。まだ伐採作業中なので土の色だけが広がって痛ましい景観です。東側の向いの稜線には赤茶けた火事跡がぽつぽつとあって、16日にここからヘリの放水を祈るような気持ちで見ていたのでした。南側には高萩山や障子山、その向こう、曇天の中に八王子丘陵の東半分が影を延ばしているのが一望です。ここから見える前仙人への斜面には火事の痕跡は見えません。

この伐採のために作業道は何本か分岐して下へ続いているのですが、今日は地図上に記載されている西ノ入林道へと続く道を歩きます。左手に引田山がぐんと近づく個所があり、まだこの季節なら頑張れば山頂へ行けそうだけど、雨降山を経由する方がもちろん趣はあるはずです。
キャタピラの跡が深く乾いた林道は大きくカーブして急激に高度を下げ、尾根を回り込んで沢に突き当たる場所から舗装道が始まります。材木が置かれて小広くなったここからは北側に登る作業道が岐れ、地図の上ではこれは主稜線の堂平山(630m)の西へ繋がっているのですがまだ上空をヘリが飛んでいる今日はこのまま舗装道を下ります。

左手に小さな沢を見ながら下る道は広々として、道脇にはキケマン、ヤマブキ、ウツギなどが花をつけ、杉林の中を真直ぐに続きます。途中ささやかな音を立てる水場があり、すぐ下の右上へ延びる作業道では工事車輌が忙しげに動いていました。暫く進むと道は遮断されていて通行止の看板。そう言われても筆者は下って来たのでしかたありません、でも徒歩ならいいんじゃないのかな。
このあたりは椎茸の栽培をしているらしく榾木が目立つようになり、右手の上の方に建物が見えるところに金葛歩道の案内板がありました。
これは曲坂峠への遊歩道で、道入口の両脇には椎茸施設の立入り禁止の看板がありますので真直ぐに明るい雑木林へと進みます。枯葉に埋もれてここの遊歩道の特徴の木枠が覗いています。出来てすぐはいかにも遊歩道だったのかもしれませんが、もうすっかり自然に帰って、枯葉は深いし木の枝が散らばり両側から草が被さる道は沢沿いに高度を上げた後は緩やかに斜面を巻いて、杉林を抜け明るい新緑の中を続きます。

だんだん空が開け尾根に取りついて東北方向を振り返ると、あ、あ、あ、手前の稜線の向こうに広がる仙人ヶ岳の斜面には茶色に変色した場所が驚くほどたくさん広がっています。奥へ行くほど、上へ行くほど酷い。あんなに広範囲なのだから消火はほんとうに大変だったと思います。
尾根を一直線に登る道はけっこう急で、緑が濃くなると煩くて歩くのに難儀しそう。登り口があんなに奥まった妙な場所なので歩くひとも少なそうですが、この道は一色から桐生川方向へ抜けるにはけっこう便利で短距離かもしれません。「菱の郷土史」の曲坂の項に「一色村有林西の入口にて、昔時は急坂なる曲がりくねりし山道で、その上の平に中屋敷と云う跡あり」とあって、かつての峠はもう少し下、東西橋あたりからこの尾根の南斜面を葛籠に登ったのでしょうか。「中屋敷」、気になります。

稜線が近づくとこちらの斜面も山ツツジが溢れて、岩混じりの急登を手すりにつかまりながらちょっと息を切らして主稜線の曲坂峠到着。ここからは歩き始めの伐採地がよく見えます。この道がずっと気になっていたので歩けて良かった。いい具合に荒れていて筆者好きです、この登り。秋からはせっせと歩いてみましょう。
あとはいつものずどんとした尾根道を展望台手前の分岐まで戻ります。尾根の両側には艶やかに山ツツジが続き、その間にアオダモやオトコヨウゾメ、キイチゴやウツギやヤマブキ、スミレの仲間もまだたくさん混じって、山は緑の呼気に包まれていよいよ五月へと。

"
"
"
緑がこんなに
山ツツジ群落
展望台から市街と観音山
”
”
”
伐採地 南に八王子丘陵も
作業道分岐
"
”
”
西ノ入林道は通行止 遊歩道案内板が
雑木林に直進
"
"
"
斜面に刻まれた遊歩道
火事の跡が痛々しい
いい具合に荒れている
"
"
"
こちらも山ツツジが鮮やか
急登 曲坂峠
"
"
"
花の向こうに歩いてきた伐採地
主稜線 このイチゴは上向きの花
"
”
”
ふわふわとアオダモ
可憐なオトコヨウゾメ
金葛の舗装道が見えてくる

* 楚巒山楽会トップへ * やまの町 桐生トップへ

inserted by FC2 system