鐘撞山・音羽山(榛名山)

*昨年でしたか、榛名山の噴火に巻き込まれた武具をつけた古墳時代の人骨が発見されて、榛名山が活火山(とは今は言わないそうだけど)なのだと改めて感じ入ったのは。赤城山より山のかたちが崩れて複雑で、上毛三山の次男坊火山だと思ってたのに一番若い火山だったことにちょっと驚きました。
その榛名山の初期の噴火でできた古い外輪山、音羽山と鐘撞山に登ってきました。

県道126号榛名山箕輪線から前の沢林道へ入ったところから右の山肌に取りつきます。例によって急登ですが植林のための作業道がすぐ現われ、稜線に一番近いあたりまで辿った後に再び檜林の柔らかな斜面をがむしゃらに登り詰めます。あにねこさん・桐生みどりさんのいつものおふたりは軽々と息も切らさず稜線に到着していますが、枯枝や伐採された大きな幹が散らばる斜面は短足筆者にはけっこう難物、さすがに手は使いませんがアキレス腱が悲鳴を上げます。
左手の植林帯が尽きて雑木になる稜線も弛みのない急登で、立春直前の日曜日、陽射しは強く風も皆無、上着を脱いで腕まくりしても汗が滲みます。道のない斜面、崩れやすい砂のような土の登りにふうふう息をついているとあにねこさんから「おかぼ平よりましでしょう」とひと言。そりゃあれと比べればたいていの登りはねえ…。

今年はどこも雪が少ないそうで、左手に眺める榛名の峰々もほんの少しの白い色が見えるだけ、斜面は厚い枯葉で覆われて靴を突っ込むとほんのりと暖かいのは南側だからかしら。三ツ峰山と天目山や天狗山、ちらと覗く掃部ヶ岳や杏ヶ岳、無名だという1271m峰からぽこんと飛び出る覗岩はなんとも可愛らしくて、少し高度を上げる度についカメラを取り出します。
周囲に笹が目立ち始めるとそれまでの急傾斜は嘘のように平らになって、鐘撞山山頂の一角です。細い木立に頂上看板、余り見馴れない円形の金属板を埋め込んだ三角点は四等、838.7m。
少し笹をかき分けた北側に石祠と「御嶽大神・阿夫利大神」の石碑があります。石碑はかなり新しそうで、本来はもっと石祠があったのでしょう、屋根や礎石が残っています。上毛三山は古い山岳信仰の山でもあります。脇の木にも可愛い山名票が。南北に広い天辺で、木立が煩くてさして展望はありませんがここでしばらくおやつ休憩です。

ここからは北にはちゃんと踏み跡があります。檜林の中を緩やかに下れば前の沢林道への降り口の標識。帰路はここを下ります。
音羽山への矢印に従って稜線を辿ります。背丈ほどの篠竹の中を通り、岩の目立つ枯葉の斜面を登り、一枚も葉が残らない枯木の根が張り出す痩せ尾根はいくらか風が当たりますが冷たくはない。左手の峰々はぐんと低くなって斜面に雪がついているのは天狗山かしら。右手の自衛隊演習場方面はすっかり霞んで春の先取りの風情です。
細い檜が乱立する植林帯を抜け、隈笹の生い茂る雑木帯に入ると道は急斜面をほぼ一直線に上へと伸びます。小さな岩場を越え空がだんだん広くなればあとひと息。そのひと息の急なこと、雪でもついていれば筆者滑りまくっていたにちがいありません。

鐘撞山もそうでしたが、登り着く頂上はそれまでの傾斜からは考えられないような平坦地。樹間には急峻な三角錐がぽこぽこと至近距離で続き、鳴神ー吾妻のなだらかな山並を見慣れている目には榛名山は荒々しく見えます。普段は赤城山の弟分のようにしか思ってないのに入ってみれば非常に複雑な、鳥の声さえ聞こえない奥深い山です。
天辺には1014.7mの、こちらは普通の三角点とどっしりした文字の山名票。広い山頂なのに細い灌木がみっしり生えた荒れた雰囲気で、この三角点前が唯一ゆったりと落ち着ける場所、早速座り込んで午餐会です。
筆者は榛名山は榛名湖周辺と榛名富士、いくつかの峠近辺しか歩いたことがないのでこの辺りも隈無く歩いているおふたりの話が面白い。長々と陽に当たりながら至福の時間を過ごします。

もう少し歩き足りないような気もするのですが、そんなことを口にしたら間違いなく三ツ峰山までと言われそうで、そんな苦行はもってのほか。大人しく腰を上げて来た道を戻ります。
登りに危惧した通り急な下りは変に弾みがついて恐ろしい、余り頼りにならない隈笹をわし掴みにして腰が引けます。ここで本日最初で最後のハイカーさんとすれ違いました。山慣れたお洒落なご夫婦でひょっとしたら三ツ峰山まで行かれたのかも。身の軽さと筋力と持久力とバランスと、欲しいものはたくさんあるのにどれとも縁遠い不幸な星のあたし(泣)。

それでも一度歩いた道は短い。岩場の下りで少し手間どってるうちにおふたりは洞窟など探して(ここではなかったらしい)、あっという間に眼下に逆光を受けた鐘撞山の可愛い影がくっきりして来て林道への分岐です。
明るい斜面を真ん前にもう高くなってしまった三ツ峰山や天狗山を眺めながら緩やかに下ると見上げるばかりの巨岩帯があり、そこからほぼ360度のカーブで広い谷を横切ります。植林の中の日陰のせいか枯葉の下は霜柱で、さくさく崩れるのが快い。雪が降ればけっこう積もるのかたまにある案内標識は根本が曲がって壊れていましたが、開放感のある気持ちのいい緩やかな下りです。一度雪の翌日に歩いてみたいような。
小さな沢音が聞こえてくれば鋪装された前の沢林道と合流して、あとはストックを振り回しててくてくと駐車地点まで。桐生みどりさんが、もう全く歩き足りなかったのでしょう、車が近づくにつれてどんどん歩幅が狭くなり山との別れが惜しそうなのでちょっと責任を感じたり、微笑ましかったり。いや、筆者は大満足なのですがやはり少しは申し訳ない。もう少し鍛える所存。

帰り道のリバートピア吉岡の薄い茶色のいい香りの温泉で汗を流し、ここ入浴料が300円、施設も綺麗で広々として気に入りました。地下1300mからの天然温泉だそうで、いい加減に流して出ると塩味になります。
桐生に帰り着けば空は暮れて本日もよく遊びました、花丸。

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林道分岐の看板
稜線へ道なき急斜面
稜線も急です
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頂上は広い
鐘撞山山名板 三角点です
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石祠と石碑 樹間に榛名の峰々 林道への分岐標識
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枯葉の積もる登り
痩せ尾根
岩場もあり
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隈笹をかき分けて
音羽山三角点 山名票
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鐘撞山が眼下に
緩やかに谷をよぎる 正面にも大きな岩壁

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