バラ峠〜小中山〜神戸山

*概念図を作っていて、どうしてこんなに大きいのか、なにか間違ってるんじゃあるまいかと何度も見直し、いつもより小さくしてもこの長さ、あたしったらばこんなに歩いたんだ〜と我ながら感心している今日この頃。すっかり秋めいてまいりました。

いよいよ沢の季節が終って地元を歩くというあにねこさん、桐生みどりさんにくっついてバラ沢峠から出発の日曜日。峠の東北側に覗く袈裟丸山は紅葉の赤を点々と散らし、白い岩肌は花も紅葉もよく似合います。ちらと見えた折場の駐車場には幾台も車が停まり本日はたいそう晴れた山日和、きっと頂上は賑わうことでしょう。
峠の小さな草原に降り立つと凄い風が吹いていて薄も揺れれば筆者も揺れる、素早く身支度を整えてすぐそばの鉄塔を目指します。
東電にいろいろ言いたいことはあるにせよ、こんな山深くに鉄塔を建て電気を繋ぎ日々点検されている方には深く敬意を払いましょう。

崩れ出した基部をよじ登り、脇の小道に入れば風はいくらか優しくなり、みどりさんが25年前に歩いたという山仕事の道はしっかりと踏まれて土肌を柔らかく縫い、見上げる空は晴れ上がり色づきはじめた木々がちかちかと光を反射して黄色く輝き、登り出しが1000mの今日はほとんどが稜線下り、息を切らせるような場所はなく、筆者の足の軽いこと。木の葉を透かす陽射しに見とれながら歩いていると、あら大変、どこかでコースを間違えたらしく、この辺りの最高峰1164m峰に着いてしまったではありませんか!あにねこさんが珍しくGPSを忘れ、筆者が持っていても豚がつけてる真珠のネックレス状態、尾根が岐れていましたっけなんて呑気なことを宣いつつあにねこさんにお渡しして、物は持つひとがあってこそと来た道を戻ります。
でもこのピーク名がないのはなんとしても惜しい。どなたかご存知の方がいればいいのに。


正しい稜線に乗れば道というより踏み跡がいい色になりはじめた雑木の間にゆるゆると続きます。眺めはごくたまに展ける程度で、見晴らしのいい稜線ではありませんが、もう鳥の声もせず一行が踏む枯葉が崩れる音ばかりの静かな静かな明るいいい山域です。
ときどき踏み跡は小笹の中に不明瞭に消えて、ほとんどアップダウンもない筆者好みの道なのですがとてもひとりでは歩けるような場所ではなく、おふたりあってこそ。と感謝していたら突然どどどんといい道に飛び出して、まだ笹を払ったばかりのような、これはどこからの道なのかしら、これならひとりでも歩けるかもと思えるハイキングコースじみた道が暫く続きます。けれどもそれも「山」標識設置のためだったのかそのうちに消え、このコースの道は実に色んな様相で変化に富んで飽きません。

緩やかに登り詰めれば小中山頂上(1116m)。ここでようやく小休止。代表幹事と歩いていたときは30分もすれば休んでいたことを思えばなんという長足の進歩!おまえのような歩きでは俺としか歩けない、なんて威張ってた代表幹事にえへんぷいぷいであります。
山頂は狭く、高い木に囲まれて展望もありませんがここは「桐生・みどり百山」に入るはずで、いくつかある山名票の「神戸山」と書かれたものは正しい山頂に置くべく取り外します。おなじみRKさんの標高だけ書かれた白い看板が残りました。それにしてもこの方、この辺りの全ての三角点を踏破したのではないかしら。どんな地味な深い山でもこれをお見かけして、どんな方なのかどんどん興味が募ります。筆者の会いたい人のNO.2で、標識を掛けているところに一度出会わせて下さいな、山神さま。
おやつを食べ、欠けた三角点と残った看板を写真に収めてさて神戸山へ。

少し進んだ岩のある場所がここからのコースの唯一のビューポイントで、青空にくっきりと裾野を広げる袈裟丸山がずいぶん遠くになりました。筆者は小丸山までしか知らず、きっといつか登りたい。
萩平からの林道の合流地点を過ぎた開けた場所で今度はお昼の大休止です。
黒ビールで乾杯した後あれを食べこれを食べ四方山話に耽りながら過ごす静かな時間。山の気に全身を委ねて、風を嗅いで、木の葉越しの陽射しに目を細め、のんびりと懐かしいような切ないような気分に浸ります。ひょっとしたら筆者はこのために歩いているのかもしれません。どの山頂もなにかしら去り難い。

さてさてここからは等高線の詰んだ尾根、下りとはいえメラを取り出す余裕がなくなります。植林の部分は小石や岩のない柔らかな土肌が救いですが、道は幾度も茂みの中に消えて、おふたりのペースについていけず、目を上げると周り一面低い灌木と草ばかり、ここはどこ?あたしは誰?の心細さ。方角も判らず時間は止まり高くを吹く風の音がするばかり。もちろん時々待っててくださるし、声の届く範囲に気配はあるのですが、そしておふたりが行く薮から見ればこんなものは薮でもないのですが、この途方にくれた気分は妙なもので決して嫌いではない。世に薮山派が少なからずいるのも判るような気がします。とはいえ全くのひとりではきっと座り込んで泣くしかないのでしょうが。

ときどき急斜面を登り、下り、一度見返った小中山も大きな山でしたが、神戸山もなかなか大きい。複雑に尾根が岐れて山は登りより下りの方が難しいというのが実感できます。
山下りって言ったじゃないですか〜、なんて泣き言をいいながら露岩のある急斜面をひいこら登れば神戸山山頂(857m)です。やはり狭くて樹木に囲われた地味な山。こちらはまだ黄葉が少ないのはただいま紅葉前線は1000m辺りを染めるのに忙しいということかしら。
外してきた看板を取り付け、こちらも百山に入るとすれば一日で二座征服の快挙になるのですが。

後はひたすらの下りです。地図に破線はありますが道のない植林の斜面をひっだのきゃっだの五月蝿く声を上げながらよたよたがさがさと。本人はちゃんとした道を歩くよりずっと楽しいのですが、果たして楽しそうに見えるのか、なんでこれが楽しいのか毎度のことながら不思議です。
最後はいい色に枯れた丈高い雑草の中に突入し、かき分け、ぴょんと飛び出る舗装道。すぐ側には行きに停めておいたもう一台の車がちゃんと待っていて、そんなことで驚嘆しているのだから、猫に小判、楚巒にGPS、なわけです。

これからだんだん紅葉が下りてきて、来月はもう里山もいい色に染まるでしょう。桐生の秋はけっこう長く楽しめます。でも熊鈴はお忘れなく。


* * *
登り出しはあの鉄塔
袈裟丸山はいい色に
見上げれば黄葉
* * *
緩やかな山仕事の道
地面には蔦の赤
緩やかに登る最高峰
* * *
正しい稜線に戻る
いい色の斜面を歩く
踏み跡は小笹の中に
* * *
突然いい道が
小中山山頂
袈裟丸の裾野は長い
* * *
振り返る小中山
最後の急登
神戸山山頂
* * *
こちらにもRKさん
植林地を下る
雑草の茂みに突入!

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