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*久しぶりに大人数で秋の山を満喫してきました。ハイトスさんご夫婦、げきさかさんあにねこさん、桐生みどりさんの豪華メンバーの足を引っ張りつつ、代表幹事がとうとうリンクを張れなかった丸岩岳へ、思っていた以上に美しい小戸川の沢を挟んでの周回コース。紅葉を楽しみ小滝の連続する沢を楽しみ、おまけに宿題がひとつ片付いたという満足感。お薦めのコースですが、新車の方には出発地までの運転が大変。崩れたばかりの個所がいくつかあって、運転が上手なあにねこさんとはいえきっと車のお腹には擦り傷がたくさんできたに違いありません。

●奈良部山へ急登する
前夜から地図を眺めて登り出しの等高線の巾の狭さを懸念していたのですが予感は的中。小戸川林道終点の駐車場所から見上げる斜面は下半分に樹木がなくて、奈良部山への看板がかかる沢の徒渉地点からは小石の多いざらざらした急登です。とはいえ夜中まで降っていた雨のわりにはぬかるまず、このあたりかなり水はけのいい地質のようです。
こんな地味でマイナーなコースに道を切ってくださった方に感謝しながら、それでも歩くひとは少ない、崩れやすい柔らかな足場をひとつひとつ選んで息を喘がせます。木製の小さな標識と赤いテープが要所要所にあり迷うことはなさそうですが、半分を過ぎいくらか手がかりの木が増えてもカメラを取り出す余裕はありません。

櫟や楢の落葉が積もる明るい稜線に這い上がりやっとひと息。空は雲が多いけれどまずは好天、真黄色やオレンジがかった黄葉に鮮やかな楓の深紅が混じる雑木の間に目的地の丸岩岳や熊鷹山の姿が見えて、今回紅葉にどんぴしゃり、いい山行になりそう。

ここからはいくらかアップダウンを繰り返す稜線歩き。時々太陽に照らされる遠くの斜面の色の複雑な美しさにため息をつき、次々にあらわれる紅葉の鮮やかさに歓声を上げ、どんな山でも歩くひとはいるのだと新旧のテープに感心し、振り返る西側にきらきら光る梅田の奥の集落を指さし(これは飛駒だったと後日げきさかさんからご教示あり)賑やかに進みます。

落葉の積もる斜面でもう一度息を弾ませれば、赤く染まる葉をつけた大木の脇に「奈良部山984,5m」のしっかりした頂上看板と旧字の三角点。ここでおやつの時間です。甘いものや果物を頂き筆者ひとり申し訳ないけれど紫煙を燻らせ、樹間に切れ切れに見える熊鷹山から野峰に続く稜線を眺めます。静かな地味な山頂ですが汗ばんだ身体に太陽がそそぎ、枯葉の匂いを深呼吸しながら下手な駄洒落を言いあうのは実に楽しい。

●丸岩岳へ
大きな岩の聳えるピークは桐生みどりさんとハイトスさんにお任せして巻きますが、この部分、大きな松が根を張り祠があってもいいようなちょっと神さまっぽい雰囲気。濡れた根に足を取られないよう注意して歩きます。イワカガミの赤茶色の葉が太陽を受けて名前通りぴかぴか光っていい感じ。
この岩峰にはタイコオロシという名があるらしい。氷室山三滝コースの下に同じ名の滝がありましたが、さてこちらは太鼓の音に関係あるようには思えず、奈良部山という名前にしろどこからついたのか、地名はいつも不思議です。


この後は余り急な登りはありません。いくつかの山標識を越えますます色合いが豊かになる稜線をゆっくりと進みます。正面に丸岩岳のなだらかな形がどんどん大きくなり、林床はクマザサが多くなって、こういう笹の中を緩やかにカーブする道、大好き。枯葉の少し湿った匂いと、遠くで求愛する鹿の甘い鳴き声と、桐生側とは違って赤味の多い山の彩りを楽しみながら歩けば心躍ります。
最初の登り口にあった標識と同じ字体の標識や赤テープの印がずっとつけられていて、これを用意して歩いて下さってる方々にひたすら感謝。

すぐ左に薄の穂が真白になった林道が現われればいよいよ丸岩岳への登り。足元はすっかり笹に覆われて細い踏み跡が続きます。ここで今日初めて下ってくる方に遭遇。どこからいらっしゃったのかしらなんて思いましたが、ひょっとしたらあちらこそこの静かな道で賑やかな登山者たちに会ってはてどこから来たのかと首を捻ったかもしれません。結局下山の最後までお会いしたのはこのおひとりだけでしたが、もっとたくさんの方に歩いてほしいような、でもずっと静かで秘かな道であってほしいような。

しっかりした稜線上の道に出会うところに山神さまの石祠がひとつ、春先の地震の影響なのか屋根を支える支柱が斜めに傾いで、祠そのものも台座が崩れて見ていると平衡感覚が怪しくなってしまいます。真摯に手を合わせるおKさんに倣って筆者も手を合わせ、世界の平和(!)と無事の山行を合わせてお願いしました。
このあたりはちょっと峠っぽい風情ですが昔からの、山頂を巻く道のようで、確かに山道を使って通行するひとはいちいちてっぺんに寄っているほど暇ではなかったのかもしれません。きっとそんな時代からこの神さまはここにいて、いくら神さまとはいえ、まさか今年あんなに揺れて傾いてしまうとは思ってなかったに違いない。

ところどころに大きな露岩のある斜面をぐぐんと登れば空が開けて丸岩岳の頂上に到着。栃木の山紀行さんの立派な文字看板に1127m、当会久々の1000m越えです。
熊鷹、野峰両方向に笹道が伸びる真中にどっしり座り込んで大休止、大午餐会の始まりです。6人で缶ビールを分けあい、みなさんに色んなものを頂き、お湯を頂いて熱いスープを作り、コーヒーを啜る。静かな至福の時間。桐生側からいくらかガスが上がって来てあまり展望はありませんが、話は弾んであっという間の一時間。

●いちろう新道を下り谷筋を下る
すっかり軽くなったザックを再び担いで、帰りは祠を過ぎて少し先のいちろう新道を下ります。どこのどなたのいちろうさんか存じませんが、この道の紅葉のそれはそれは見事なこと!陽に透ける豪華な赤の重なり、輝いて揺れるオレンジ色、明るく燃える黄色、時々混じる白樺の幹。道を覆う落葉も色とりどりで見飽きない。下り出しこそ急ですが笹の中を降りれば、もう帰ってしまうのが惜しくなる色の競演が続き、幾度も立ち止まって周囲を眺めてはため息を吐く。
人生を損得で考えたことはないけれど、ひととして生まれたならこの道の秋を一度は歩くべき、と力説しておきます。

高度を下げれば周りはまっ黄色の葉を付けた低木帯になり、この一面の黄色も美しい。ただし重なる落葉を踏めば滑りやすく、湿った木の根は思わぬ方向に足を攫い、散らばる朴の葉は石と見紛うので足元の注意を怠れません。転ぶのが怖い筆者はひたすら慎重になって、淡々と進むみなさんに何度も待ってもらうのが情けないけれど、改めて歩き方のコーチを受けてもなかなか上手く歩けない。

植林帯に入ったあたりで道は稜線から離れてロープが張られた斜面へ。歩きやすそうな尾根はそのまま進むと崖になるらしく、滝音が響いて下の方にかなり大きな滝が見えます。急な斜面を幾度か葛籠に折れて渓流沿いの道と合流すれば、ここが熊鷹山への道との分岐。枯れ色の中に白い飛沫を上げる小滝が上流に続いて、沢沿いのこちらの道も素敵な趣。新緑の季節にはここを歩こうと約束を交わしました。
ここからは高くなったり低くなったりする渓流に沿って下ります。前夜の雨で水量が多く、それぞれ名を持つ小滝の連続と黄葉のコンビネーションが爽やか。木橋を何度も渡り流れの落差を楽しんだり、坑道の跡を眺めたりして進むと道はだんだん固く広くなり駐車していた林道の終点に着きます。

紅葉の盛りとちょうどタイミングが合って、しかもいつもお世話になっているサイトの方々とのタイミングも合い、充実したコラボ山行、相変わらず騒がしいだけでご面倒をおかけしましたが、愉しくて美しい、秋真っ盛りの山でした。
お付き合いくださったみなさん、ほんとうにありがとうございました。

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まずはあの天辺へ
朝日を受けるメンバー
下り口の看板
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這い上がった尾根
あれが丸岩岳
秋色真っ盛り
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ところどころに標識あり
奈良部山への急登
遠くに山並み
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奈良部山看板
旧字の三角点
ひときわ赤く
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丸岩岳が正面に
陽に輝く
笹の道を登る
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だんだん大きくなる丸岩岳
傾いた山神さま
頂上看板
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息を飲む深紅
周囲全て紅葉が美しい
熊鷹山への道と合流
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古杉の並ぶ道
次々と滝が
五段の滝

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