鳴神山(赤柴口)

*鳴神山、かつては雷神岳(なるかみだけ)とも嶽山(たけやまorたけさん)とも呼ばれたと山田郡誌にあります。確かに夏、こちらの方向が稲光で白く輝き雷鳴が続く夜は多く、筆者はそれを眺めているのが好きで、まあ室内にいることが条件ではありますが、見飽きません。雷とかかあ天下と空っ風の上州ですから山には雷電さまの祠が多く、今ではご祭神は倭健命ですが高山彦九郎がやってきた頃は山神さまだったといい、梅田側からでも川内側からでも神事が盛んだった鳴神山はそれらの総本山かもしれません。

4月半ばの日曜に続いて鳴神に登るのは、そのときまだ蕾だったヤシオツツジがあっという間に終ったとのネット記事を確かめるためと、そのときお約束した赤柴の道を歩いてみることと、わが会長が幹事を務める句会の吟行の下見のため、と言いたいところですがまあ要するに○○のひとつ覚えではあるでしょう。今年初めての山だという忙しい会長をご案内するのに程よい長さでもありますし、なんといっても行ったばかりで登り口まで迷うことなく着けるはず。

楚巒の山行なので登り出しは例によって遅い時間で、到着する駒形口は既に長い車列が路肩に続き、バス利用の方やタクシーで到着するグループも続々といらして噂には聞いていましたがGWの鳴神はなんだか桐生ではないみたい。カラフルな山タイツに巻きスカート、可愛らしいソックスに高そうな山靴の山ガールの一団もいて、筆者女ではありますがわーい眼の保養だーと浮き立ちます。この季節も少しバス便を増やすとか、ヤシオと新緑の写真を公募するとか、公的機関も知恵を絞ればいいのに。混む山を敬遠される方も多いでしょうが、混むからこそ来る方もいるわけで地元住民としてはやはり山が賑わうのは嬉しい。

山道に入れば緑は前回より色を濃くして、カタクリこそもう見えませんがニリンソウやヒトリシズカ、いろんなスミレや黄色や紫のケマン、イチゲの仲間と小さな花は多く、花を愛で緑を愛で風を愛でて植林沿いの緩やかな登りや岩場じみた谷筋をたくさんの方々と前後して歩きます。
高度を上げれば雑木の浅い谷にはまだまだ初々しい緑が青空に映え、道には山桜やツツジの花弁が落ちていて、鳥が落としたような黄色の花はクロモジかしら、今年の花は一気に短い期間だけ咲いたのかもしれません。

稜線に上がってすぐの鳥居あたりでは梅田側からの登山者も多く、う〜む吾妻山より混む山がこの町にあろうとは思わなかったわ。
桐生岳は腰を降ろすのも憚られるほどの人なのであっさりと山頂を後にし、例年ならピンク色に彩られる仁田山岳も茶色が勝って、こちらも人が多いので巻いて椚田の峠を目指します。
この日は西からの風が強くそれが冷たいこと。一昨年のGWに会長とこちらから登ったときはツツジのトンネルだったのですが今年はごくたまにしか花色を見ることはなく、顔を上げていると帽子を吹き飛ばされそうで露岩の尾根を俯いたまま足を早めます。登路よりぐっとひと数も少なく、混むのが嫌いな方は来年はぜひこちらから。花つきが良ければピンクのトンネルの素敵な道です。あ、これからのカッコ草も椚田の斜面の方が華やかです。

強風に晒されてあんまり寒いので椚田の神さまの祠への挨拶もそこそこに赤柴口へ下ります。
こちらも明るい谷で道もしっかりしていて歩きやすい。少し下れば赤城山が見えなくなり、そうなると風も止んで、でもまさかGWに赤城颪に会うとは思わなかった、今年の天候はなんだか変。
陽当たりのいい斜面の枯葉の中に腰を降ろして大休止。見上げれば空の青と若い緑が絶妙な配色で、山の至福は山頂だけに非ずです。
ときどき下ってくる方と挨拶を交わしながら長々と時間を過ごし、あと少し下れば舗装道と出会う赤柴口。

筆者実はこの赤柴の道、地図を眺めて車道歩きが長そうなので敬遠していたのですが、この林道ほとんど鋪装はなく左手に沢を見ながらの広々した気分のいい道で、ここなら夏でも歩けそう。穴切の沢沿いと並んで初夏お薦めの散策路です。
ヤマブキとモミジイチゴの花が交互に満開を競い、下る左手山稜の斜面には山桜が真っ白に花を誇り、空は輝く青さだし緑は花に劣らず美しく、桐生はほんとにいい町です、となんだか地元愛炸裂。
あの稜線にも道があるのだとか。そのうち歩いてみましょうね。

* * *
わ、車がいっぱい
歩き出しの緑は濃くなっている
上の斜面はまだ芽吹きの色
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稜線にはひとが多い
日光方面
ほんの少しヤシオが残る
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椚田への尾根
峠の石祠が見えてくる
明るい谷を下る
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赤柴口案内標識
山桜が新緑に映える
沢も新緑を映して

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