2014.11.30
金剛萱の天辺で雪のついたあれが小沢岳と教わってから丸三年。西上州のマッターホルンと呼ばれる尖った頂にようやく登ってきました。うーんと楽なコースをとあにねこさんにお願いした山行でまさかマッターホルンに登れるとは ^^。
葱と蒟蒻の下仁田を過ぎて青倉川に沿ってぐんぐん南下。道脇には分岐の度に小沢岳への小さな表示があってなかなか人気のある山ではないかしら。などと言ってもただ助手席にお邪魔しているだけですが、その内七久保橋そばを通って小さな駐車スペースに到着。足元の支度を完了すれば、右手の沢がすっかり葉を落とした山肌に白々と光って、この秋だらだらと過ごして余り歩かなかったのを今更ながらに後悔します。
歩き出す林道はガイドブックやあにねこさんの記憶ではずいぶん荒れていたようですが、少し補修されたのか余り大きな崩れがなく歩きやすい。水の清冽さを楽しんだり、跡形もなくなった八倉への沢道を想像しながらゆっくりと登りましょう。久しぶりの登りに息を弾ませているとぽんと椚峠に出ます。柔らかな陽射しの中、枯葉に半身を埋めた馬頭観音が二基、ほんのりと微笑んで暖かそうに鎮座していていかにも峠の風情。手前の観音さまの頭上の馬さんが目を見開いて、かわゆす!
峠から南牧村側に林道が下っていますが鎖で閉ざされているので車では通り抜けできません。尤もここに来られるのは余程山仕様の車じゃなきゃ無理で、良い子は下からしっかり自分の足で登るべし。
尾根の左側にも林道が続くようですがもちろんここは稜線の山道を歩きます。右側の斜面が伐採されて見晴らし抜群、向いの一面枯れ色の山肌に一本散り残りの楓が朱赤に輝いて美しい。
空に向かって着々と高度を上げ、伐採地の下方に小さく開ける七久保の集落や檜の緑と残る紅葉のパッチワークを愛でるうちに道は小暗い植林地の登りになります。一気に風が冷たくなりますが汗ばんだ身には快感で急な傾斜もなんのその。一度山標識のある小ピークに乗り上げ、勿体ないほど下ってまたはあはあ言いながら登り返すと1000mの前衛峰で、ここは展望はありませんが樹林の間に目指す小沢岳がはっきりと見えます。
ここで植林の檜は切れて樺や櫟の雑木林になり、少し進むとその林もなくなって、露岩の目立つ丈の低い灌木の間を道は山頂へと。石祠と頂上看板ふたつ、三角点、それにこの高さの天辺には珍しい大日如来さんがお待ちかねです。石像はまん丸の光背石に浮彫りで優しい表情をしてらして、登り着いた高みにこういう方がおわすと実に嬉しい。しっかりしたお賽銭の箱とお猪口が供えられ、器には最近お酒をお供えしたのかな、周囲には汚れがなくて今でも信仰されているのが判ります。
展望もほぼ360度。歩いてきた方向から順に山の名前を教わり、桧沢山のギザギザや遠くの浅間の白に目を細め、特に右手下方の鹿岳の特異な形には改めて見入ります。幾重にも重なる西側の山並にはいくらか雲がかかっていますが空は真青。やはり山はいい。
それなのにあにねこさんはもうすぐ曇ると予言。お昼を広げているうちにほんとうにあっという間に空は翳り出し、食べ終わる頃には真っ白、もうどの山も見えなくなってぎりぎり展望がある内に到着できた幸運を喜びました。でもなんでそんなお告げが可能なのか不思議で、空を見れば判るなんて宣われても首を捻るばかり。いかにも間抜けな気分です。
降り出さないうちにと大休止の腰を上げ、来た道を戻ります。途中おひとりだけハイカーさんとすれ違い、この方には筆者がもたもたしているものだから車に下り着く前に抜かれてしまいました。てへ。
登りのときはさして目立たなかった草紅葉の赤を写真に収め、後ろを振り返り、咲いた形のまま枯れたような三椏の白い花に見蕩れ、再び峠の馬頭観音をつくづく眺めて、小沢岳、とても静かな気分のよい山でした。
登山口の様子のいい沢 |
新しそうな標識が立つ |
椚峠の馬頭観音 |
ここから山道を |
右側は伐採され展望が良い |
七久保の集落 |
植林地をひたすら登る |
前衛峰から小沢岳 |
灌木の中をしばし急登 |
石祠がちんまりと |
お隣に大日如来の石像 |
ぐるりと展望が開けている |
遠くに浅間山も |
頂上看板 |
鹿岳は不思議な形 |