石尊山〜雨降山〜一色山周回

*記録的な大雪の後なかなか消えなかった白い色もようやく消えて、代表幹事の五年目に当たる命日はちょうど日曜日、久しぶりにわが会長を桐生に迎えて余りひとが歩かない小松石尊山から雨降山へ登りそのまま稜線を歩いてお墓参りを兼ねて泉龍院までを周回してきました。
お弁当を持ち線香を持ち花も持ち、なんてあれこれ用意して出たのに肝心のカメラを忘れて今回の山歩きは写真がありません。残念だ、残念だとしつこく何度も繰り返しながら、固い芽吹きがやっと始まった里山をゆっくりと歩きます。

桐生女子高の対岸、小松橋のすぐ先の土止めのブロックの間の石段が出発点。すぐ左手の愛宕さまの鳥居を潜って階段を上がります。鬱蒼と茂っていた椿がかなり伐採されて明るくなった山肌に岩が目立ちだすとすぐに二基の石祠のある頂上です。この石祠、額がない方は阿夫利さまだと桐生みどりさんに教わりました。仙人ヶ岳へ続く稜線の、この右に見えるピークを代表幹事が雨降山と呼んだのは、「小松橋の東の山」という根拠だったのですがほんとはこの天辺の別名だったのかもしれません。ほんの小さな高まりですが、下の舗装道ができるまではきっと難所だったので麓にも頂上直下にも、色んな神さまがたくさん集まっているのでしょう。

ここからは夏に上げられた梵天の幣(ぬさ)が白く散らばる右奥に進んで仙人ヶ岳への稜線へと尾根を辿ります。4年前に歩いたときは足を降ろすのが申し訳ないくらい菫が咲いていたのですが、今日はまだ早いのか枯れ色一色。けれども目を凝らすとツツジの灌木に固い芽吹きが始まっていてあと二週間もすれば柔らかな緑が煙るようになるはずです。
尾根にはほとんど目印はありませんし踏み跡も時々怪しくなりますが高い場所を拾って歩けば迷うことはありません。

右に緩やかにカーブする尾根が植林の濃い緑に突き当たれば赤テープとペンキの塗られた杉のある主尾根到着。北斜面にはまだいくらか雪が残っています。固く踏まれた縦走路を右に進めば前方に単独の登山者の後姿が見え隠れして、まあ楚巒の山行はいつも遅い出発ではあるのですが、もう仙人ヶ岳からの戻りだとすれば随分早い!
たいていはサンダル履きでひょろひょろと(と形容するには体積があり過ぎましたが)歩いた代表幹事に倣って、会長と筆者はゆるゆると、もうとんでもなくゆるゆると道を楽しみます。

雨降山に残る当会の標識をしみじみと愛で、向かい側の鳴神ー吾妻の稜線を眺め、この山頂には二人とも代表幹事と色んなコースで何度も来ているのですが、三人では歩いたことがなかったのを今さらながらに悔いたりして、どんなに時が過ぎても話は尽きない。
ここからは昨年の末以来筆者は何度も往復している得意な道、また刈り払われてますます歩き良くなった下りを颯爽(?)と先に立ちます。大きな作業道に合わされば賑やかな人声がして、なんと下毛交通の旗に連れられた大パーティ。そちらはどこへ続いているのですかと聞かれて、ほんの少ししか辿ってないのに胸を張って仙人ヶ岳ですっ、と見栄を張ってしまいました。

鋪装林道を下るみなさんを見送って展望台へ。薄らと黒い秩父の山並や真っ白な浅間を眺めてまたあれこれと思い出話や俳句のことを喋りながら一服です。
先月雪が降ってからは山歩きをしなかったのでここからの稜線の急登急降下はけっこう足に来ます。鳳凰三山だって、穂高だって登ったのにと会長はぼやきますがはてそれから何十年経ったのやら。
釈尊が寝そべる一色山で予定よりは少し早いお昼にして大休止の後は、観音山への縦走路を少し進んで三尺坊の標識から下ります。余り歩かれていないようで枯枝や深い落葉に猪の掘り返した跡がずっと続き、それでも周囲は雑木の林でこれからの新緑が美しそうな静かな道です。
堰堤のある作業道に出、猪除けの柵に突き当たれば代表幹事が書いていた通り泉龍院の真裏。柵の扉は開けたら必ず閉めましょう。

お墓参りの後は中尾根から一色山へ登り返します。一度舗装道を踏んだ足はすっかり安心していたので、このなだらかな登りにも不平たらたらですが、こちらも雑木の中を縫い、桜の大樹が目立つのでその季節にはきっと歩いてみたい道です。
お釈迦さまの前でもう一度煙草を燻らしたら、下りは植林帯を抜ける遊歩道を歩きます。あの大雪で山はたっぷり水を持っているらしく、いつもは涸れている沢は陽を反射してきらきらと輝き水音が心地よい。自分が歩く道が眼下にカーブを描いてこれは筆者お気に入りのコースです。
陽当たりが良くていかにも片栗が咲きそうな斜面はまだ枯葉に覆われて葉っぱも見えませんが、これもあと二週間もすれば緑が萌え始めるでしょう。里山が嬉しい季節はもうほんの目の前です。

遊歩道が尽きて金葛の広場は山肌に白梅が満開で燦々と陽が降っていて、う〜む満足。その上桐生川に向かって下っていたらこつなぎさんにお会いしました!遅いですねえと声をお掛けしましたが、こつなぎさんは夕陽の方。ついこの間ここからではありませんが泣きたくなるほど綺麗な日没を撮ってらして、ここでも雪の残るとき登られたレポもあり、ちっとも遅くはないのでした。今日もいい写真が撮れますようにとお別れし、あとはとぽとぽと堤防歩きで出発点へ戻りました。

五年、あっという間のような気もしてこれからのまた五年、一体どれだけ歩けることやら。

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