田黒山

*代表幹事なら田黒山だけを登りに行きました、と強弁するところですが、筆者はそんなことは言いません。三境山が思ったより歩きよくて早く降りてきたのでこんなに上天気の山日和、帰ってしまうのがちょっと惜しい、もう少し歩きたいかも。ふふふと笑いながら、この先に小さな三角点があるんですよ、とあにねこさんが示す地図には、三境林道の途中から草木湖側に平たく延びる可愛い高まりがあって、桐生みどりさんがすかさず「田黒山」と名を言います。なんなんだ、このおふたりはと驚きつつも、よおし、おまけでひょいひょいっとひと山やっつけるぞと意気込みました、最初は。

三境林道をトンネル方向にしばらく登り道が大きく左にカーブする、その右側に田黒山はあります。林道からの標高差約20m、扁平な長い尾根を歩いて一度20m下り、10m上下して再び20m登ると天辺、急なのはその取りつきくらい、というのが筆者の地図読み。
確かに林道から盛り上がる高まりは急傾斜で、でもここさえ過ぎればとガードレールの切れ目から斜面を這い上がります。先行おふたりは談笑しながら難なく登っていきますが、筆者はそうは参りません。お得意の四足歩行にギアチェンジして、けれども手をかける岩は脆く崩れるし、掴まる樹木はみな朽ちてあっさり折れるは抜けるは、あっという間にとり残されます。踏み跡は一切ないので上を目指してひたすら直登、というより山にしがみついてじりじり身体をせり上げる状態がしばらく続きます。

ようやく着く痩せ尾根は左手の細い植林帯も右手の色づく雑木帯もかなり急で、れれっ、平坦なはずではなかったのか、なんて文句を言ってももう遅い。
尾根を辿れば、尖った岩尾根の急降下、急登が幾度もあります。このHPを引き継いでから確かに筆者は何度も泣きました。根本山の鎖場、丸石沢の長い長い下り、白浜山の最後の急降下、白岩神社や白平不動の嶮岨な登り。けれども ここの子になる とは一度も言わなかった。まあそれらはどれも周回コースなので帰りに拾ってもらうわけにはゆかないからもありますが、足さえ出していればなんとかなると思えました。けれどもここは崩れる足場と脆い手がかりばかり、下った道は必ず登れるとしても、しがみついて登る斜面を今度はどのように降りればいいのか。
みどりさんは既に影も形も見えず、あにねこさんが難所のたびに待っていてくださるのも心苦しい。いいもん、ここの子になって待ってるもん、ととうとう吐く禁句。
大丈夫もうすぐです、とあにねこさんが請け合ってくださるけど、山のもうすぐはあてにはなりません。

きゃあともひゃあとも声を出す余裕がないまま再び下って登れば左斜面が紅葉でいい色に燃え立ち、それを力に痩せ尾根をもう少し辿れば、西北側が鉄条網で囲われた頂上到着。こちら側は断崖絶壁がまっすぐに切れ落ちています。雑木の中で視界は開けませんが、小枝の絡み合う隙間に草木湖が青く光り、北側にはあれが天狗山だろうという山稜が見えます。三角点と、まさかのR.K氏の791.9m看板。まったくなんて方々なんだ!この世の男どもときたら。
腰を降ろすスペースもなく、立ったままひと休みして、さて、来たからには戻らねば。
さすがに帰路はカメラを取り出す余裕が出るのは一度通った道だからかしら。淡々と歩くおふたりの後をやっぱり四足歩行になったり、お尻を降ろしたりしながら追いかけて、でも取り付きの急斜面は危惧していた通りの大難所、しくしく泣きながら下りました。
桐生・みどり百山に絶対入れて地形図がいかにあてにならないか思い知らせてやるんだ。
って、でもまあ筆者以外にはそんなに大変な山ではないのかもしれませんが。

桐生への帰途、大きな楓が長い光線に艶やかな色を散らすのを愛でた後に草木湖のドライブインに寄って、湖面側から田黒山を眺めました。けっこう姿もいい山です。ダムができるまでは三角点があるに相応しいどっしりした山だったんだろうなと思います。(そうならおまけでは登れないけれど)

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左側が田黒山への尾根の始まり
登り着く痩せ尾根
三角点と鉄条網
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あれが天狗山(のはず)
R.K氏は来ていた!
途中のいい色の斜面
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林道沿いの大楓
右の稜線に天狗山がある
草木湖側から田黒山

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