姥穴山〜桂山〜雷電山

*掲示板でikkoさんに教えていただいた三笠山大神の首がそのまま残っていることを願いながら、菱町1丁目のゴルフ場から姥穴山、薮がひどいという桂山への稜線を辿り、雷電山、富士講の石造物がたくさん残る富士山参道を周回するルートです。

県道桐生坂西線を足利方面へ、宇都宮神社からゴルフ場に沿って北上します。庚申塔や石祠がある道路脇のスペースに駐車し、さてこのコース最大の難関は立入禁止の表示があるゴルフ場のがっちりと施錠された門扉。物理的にもですがけっこう心理的に抵抗があります。けれどもこれは公道、桐生みどりさんとあにねこさんの助けを借りてえいやあと乗り越えます。何組かがプレイされてる間を縫って尾根の取りつきそばの、ずっと見たかった竜頭と不動尊を拝見。竜頭左手の、朱色が残り火焔の彫りも深い不動明王の他に、竜頭のすぐ下にも小さなお不動さまもいらして五丁目の丁石が半分土から覗き、竜の口から水こそ出てはいませんが立派な石組みのいかにも修行場の始まりという佇まいの池です。

すぐ後の門扉をもう一度乗り越え、沢筋は厚く落葉と倒木に覆われているので笹薮を漕いで尾根筋に出ます。しばらくは踏み跡ははっきりしませんが、ゴルフ場の排水溝らしいブロックを越えれば足許はしっかりしてきて、そうです、4年前のやはり12月、白葉峠から御嶽信仰の石造物を追って来て筆者はこのあたりでみなさんとはぐれ心細い思いでうろついたのでした。見覚えのある岩場を左手に見て少し登ればまず倒れている大きな石碑、そのすぐ先にこちらはちゃんと立っている一心霊神碑。
すっかり葉を落とした細い灌木の間を登ってゆくと、次々に壊れた石像の基部や神名を刻んだ石碑が現われ、左手にはこの後訪れる予定の桂山が青空に三角錐に見えて、ときどき露岩の目立つそれほど急登ではない心愉しい信仰の道です。
最初に右手の尾根と合わさる場所の大きな岩には八海山大頭羅神王の台座が据えられ、上には首の欠けた胴体が横たわっています。同行おふたりはもちろん岩上でそれに触っていますが筆者は足をかけただけで胴体の断面を撮るのが精一杯。なんとか登れたとしても降りる自信なし。

次にまた右手から急な尾根が合流する所が今回の第一番の目的の三笠山大神のある315mあたり。うちの代表幹事の言う「御兵様」がここではないかしら。
三笠山大神は前回来たときには四角い台が残るだけでしたが今回はその上に細々とした破片が載せてあって、あ、これはきっと刀の部分、こちらは腕の部分では、と白っぽい石の塊を手にして想像するのですがどこを探しても写真で見たお顔がない。落ちるとしたらこっちでは、と西側の急な斜面を下ったり、東の岩盤から身を乗り出してみたり、三人でけっこう時間をかけたのですがハンサムな神さまはとうとうお顔を見せてくれませんでした。う〜〜〜む、残念。。

あてどなくGodを待ってもどうなるわけでもございません。見たかったよー、悔しいよーと繰り返しながら、火産神、大江女護神、武尊神を過ぎ、樹間にだんだん低くなる八王子丘陵を振り返りながら姥穴山山頂を目指します。
一昨年の地震のせいでしょう、山頂の祠は前面の柱が一本折れてどなたかが修復してくださった跡があります。ご無事で遠く西方を眺めてらっしゃる座王大権現の前でしばし小休止。運転のないお気楽筆者はひとりウイスキーなど口に含み、本日も空は晴れてここは風がないのでうらうらといい日です。

ここから桂山へ向かう南斜面はどなたの記事でも薮がひどいらしい。靴ひもを締め直したり帽子を冠ったり、おふたりはそれが薮対策だというけれどあんなものでいいのかしら。とはいえ筆者は特に用意はないのですが。
露岩があるうちは快適な尾根は笹床の雑木帯に入ると急傾斜になります。道はもちろん踏み跡もありません。
それでもまだ、行手に綺麗な三角形で桂山がときどき顔を覗かせるうちは鋭い棘のある木にさえ掴まらなければなんとかなりました。そのうち篠竹の密生する薮に突入。がさがさと両手でかき分けて、先を行くザックは目の端をよぎりますが、進む方角へ気をとられて足許に注意しないと変な具合に竹に捕まって進退きわまること幾度。背丈を超す笹薮はときどき跳ね返って顔を打つし、もたもたしてるとどちらへ進むのかも判らなくなる。ひえ〜ん。

すっかり汗をかいて、でもこうびしびしと跳ねる竹の中では腕まくりもできないし、なんて泣いていたらふいに薮は途切れ、風が吹きすさぶ鞍部到着。乾いた砂地のここは西側の見晴らしが一気に開け、眼下には桐生の町が白く広がり、低い雲の浮かぶ青空に上毛三山がくっきり黒く、その向こうには真っ白になった浅間山。けれども風が冷たくてとてもじっとしてはおられず、ぴょんぴょん飛び跳ねながら景色を楽しみます。
すぐ上に見える桂山ピークには、再び薮に突入しての急登ですが風が来ないので薮もまた嬉しいような。

息を切らせてのひと登りで楚巒山楽会のもう全く字の薄れた山名票の残る山頂。ここからはさっきいた姥穴山が思ったよりどっしりと高くに眺められ、その東に伸びる小俣石尊山から石切場を経て湯殿山への山稜が影を深くして美しい。
風を避けた陽だまりでお昼の大休止です。食料を広げ、目の前の大きな楢の木が広げる枝を透かす陽に目を細め、枯れきってついたままの茶色の葉っぱがたてる乾いた音に耳を澄ませ、今回はルートが短いので乾杯がないのがちょっと残念。薮は思ったほどひどくなかったとおふたりは言うのだけど、じゃあひどい薮ってどんななんだよー。

ゆっくりと時間を過ごした後南への稜線を下ります。道はいまひとつはっきりしませんが枯葉と雑木の斜面はさっきよりは篠竹はまばらで歩きやすいし手がかりもたっぷりです。
すぐに二基の祠が待つ雷電山。祠に銘はありませんが草陰に酒壜が転がってたのでお祭りは続いているんじゃないかしら。山頂北側に歩いてきた稜線がすっかり眺められて、確かに姥穴山から桂山へは急峻ですが、ゴルフ場から登った尾根もなかなか急で今日も筆者はよく歩いたものよ、うふふ。

ここからの道は今までとは全く違い岩と松の目立つ痩せ尾根で、南に霞む関東平野を一望するうちにあっという間に富士山ですがなかなか面白い。山頂の立派な石祠に赤い布が巻いてあり、屋根に刻んである「富士山」の文字もなんだか誇らしそうです。
下る道はいまひとつ明瞭ではありませんがもう信仰の跡のオンパレードです。周囲に目配りして探しながら上手に下りましょう。霊神碑や合目石、しっかりと造られた石祠、亀磐龍神なんて凄い名前もあり、目立つ岩があればきっと近くに何かある。枯葉を蹴散らし細い枝をかき分け行ったり来たりして、この富士山は上電の富士山よりずっとずっと面白いのにアプローチが不便なのが惜しまれます。
がさがさわしわし下って、下に舗装道が見えて来たら踏み跡もはっきりして、下り着けば赤い帽子と涎掛けをつけたお地蔵さまと庚申石が並ぶいかにも山里。入り口には赤いリボンがあります。どんどん登る方が増えて道がしっかり踏まれますように、とお地蔵さまに手を合わせます。

ここからゴルフ場に沿って北に歩いて駐車場所へと。途中ゴルフ場内に石祠や巡礼塔が見えるのですが柵に囲まれて進入禁止なのがなんとも惜しい。山と歴史の町なんですもの、せめて門扉を出入り自由にしてくれればいいのに。

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最初の難関門扉を乗り越える
竜頭と不動明王
登り口を探る(右の尾根に強引に)
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左手に桂山の三角形
丁目石と金毘羅神
主稜線を目指す
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三笠山大神の大岩
姥穴山山頂
桂山を見下ろす
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雑木の中を下る
笹薮突入
鞍部から桐生の町と上毛三山
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姥穴山を振り返る
小俣石尊山からの稜線
もう読めない桂山山名票
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雷電山山頂の石祠
右姥穴山・左桂山
八王子丘陵と太田金山
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富士山山頂石祠
けっこう急降下
参道入口の庚申石やお地蔵さま

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