帝釈山脈東部 枯木山

増田 宏

* 帝釈山脈は一般に田代山林道以西を西部、以東を東部と区分している。西部は標高が高く、針葉樹林に覆われた緩い峰が連なっているが、東部は標高が低く、西部の山に比べて急峻である。東部の最高峰で山群の中心にあるのが枯木山である。痩せた山稜と急峻な山腹からなり、四方に長大な尾根を延ばし、5つの大きな渓谷が流れ下っている。枯木山は南会津や帝釈の山を目指す登山者にとっては憧れの山であるが、帝釈山脈の中では最も不遇の山であり、登山道はおろか踏跡もない。
 このところ帝釈山脈西端部の片品川流域の沢を中心に歩いて来たが、今回、山仲間の森田さんと帝釈山脈東部の枯木山を最短登路の湯ノ岐川支流赤岩沢から目指した。
 前夜、山麓の宿に泊まって早朝に出発した。赤岩沢の林道分岐に駐車して歩き始めたが、無理して林道を車で入っても歩いて5分ほどの湯ノ岐川本流を渡る地点までしか行けない。湯ノ岐川本流を飛び石伝いに渡って旧林道伝いに行く。草が生い茂って人一人が歩くのがやっとだ。旧林道は左岸支流を合わせたところで終わり、合流点のすぐ手前で赤岩沢に下りる。合流点は淵になっているので固定ロープを手掛りにして右岸を小さく巻いた。この先は小滝がところどころ散発的にあるが、容易に越えられる。二俣を左の本流に入り、小滝を二つ越えるとこの沢最大の10b滝が現れた。右の枝沢との間のガレ場を登り、途中から木の枝を手掛りに左の斜面に取り付いて落口に下る。この滝は一見直登できそうだが、下から見えない部分が悪いので直登は避けた方がよい。
 左岸に枝沢を分け、小滝をいくつか越えると殆ど水がなくなり、急斜面になったので左の山腹に取り付いた。笹を手掛りに急斜面を登り詰め、枯木山頂上と南峰の中間付近の稜線に出た。稜線上には僅かに踏跡らしき部分もあるが、大半はシャクナゲの藪で距離は短いものの、きつい藪漕ぎが続いた。やっと辿り着いた山頂は藪の中に山名板があるだけで雄峰の風格は感じられない。曇りで展望もなく期待外れだったが、簡単に登れない頂なので達成感は高い。
 道がないので帰りも往路を下る以外にない。稜線に出たところに下山用に目印の赤布を付けておいたが、見落として稜線を南に行き過ぎてしまった。笹を漕いで急斜面を下り、左岸支流を経由してようやく往路に合流した。結果的にザイルは使用しなかったが、下りで使用する可能性があるので持参した方がよい。易しい沢でも下りの方が難しく、時間がかかったので往復9時間の長丁場であった。今後も枯木山は道のない憧れの山として存在し続けてほしいと思う。

 2010年10月17日
 林道分岐(2時間)二俣(2時間)枯木山(1時間30分)二俣(2時間50分)林道分岐

赤岩沢下流 赤岩沢下流の小滝
十b滝 頂上の藪
枯木山頂上 頂上付近から黒沢源流
赤岩沢の下降 赤岩沢で見かけたナラタケ

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