奥鬼怒日光沢

増田 宏 


 山仲間の林さん、森田さんと鬼怒川上流の日光沢を目指した。鬼怒川上流は日光側から行くと遠いので丸沼から湯沢峠を越えて行くことにした。丸沼から湯沢峠まで標高差が五百㍍あり、地図上で考えたより時間がかかる。登山道が根名草沢に下りた所で幕営するつもりだったが、適地がなくてオロオソロシ沢横断地点まで行った。
 翌朝、明るくなるとすぐ出発し、日光沢温泉まで行く。鬼怒沼を目指す人たちが続々登って来る。
 日光沢は日光沢温泉のそばで合流している。日光沢の地名由来は分からない。日光に通じている沢なら分かるが、沢は全く逆方向から流れている。出合に日光沢の滝15㍍があり、両岸とも険しくて登れない。右から大高巻きして滝上にある堰堤上に下り立った。しばらく行くと第2の堰堤が現れた。両岸とも険しく、右から大高巻きして越えた。2つの堰堤の通過に想定外の時間を費やしたが、ここが日光沢で最も大変な箇所であった。
 やがて鬼怒滝が現れた。右を直登できると思って登り始めたが、予想外に手強く途中から木を手掛りにかろうじて越えた。仲間は私が苦労しているのを見て容易な左のガレ場から巻いた。上にも15㍍滝が続いており、鬼怒滝は合わせて30㍍の大滝であった。右が面白そうだと思って上段の滝を登り始めたが、落口が意外に悪く、戻って容易な左側を登り返した。他の2人は最初から左を登った。
 左に支流を分けると階段状の滝が連続する。いずれも手掛かり足場が豊富なので快適に登れる。一連の滝の中で印象に残るのは2段10㍍滝である。右に支流を分け、源流が近いと思った頃に立派な15㍍滝が現れた。手掛かり足場は豊富だが、傾斜がきつく高度感があるので右の窪を登って途中から木を手掛りに落口に出た。源流は傾斜が緩くなり、上部まで水が流れている。最後に笹藪に突入し、針路を西に変えて笹を漕いで鬼怒沼山三角点の南鞍部に出た。晴天の予報だったが、霧雨が降って寒い。冬型気圧配置らしく、降雪の跡もあった。
 鬼怒沼の避難小屋に入って休憩したが、悪天のため小屋で休んでいる人が多く、混雑していた。鬼怒沼は悪天にもかかわらず雨具を着た人々が多く往来していた。この様子は公園を歩いているのと大差なく見える。山登りには未知の要素が多少なりとも必要であり、私は公園歩きでは満足できない。地元の山域を対象に山登りを続けていくには結局のところ沢登りしかないのかもしれない。
 人々に混じって登山道を下り、テントを撤収して下山の途に就く。根名草山の山頂部は降雪で白くなっていた。標高差五百㍍の湯沢峠越えは時間的にも体力的にも容易ではなかった。ひとやま登った後に峠を越えるのは賢明ではない。峠の下りで日没となり、薄暮の中をようやく丸沼に戻った。

2009年10月11日〜12日
丸沼(1時間30分)湯沢峠(1時間30分)オロオソロシ沢
オロオソロシ沢(45分)日光沢(1時間10分)第2の堰堤上(3時間)稜線(20分)鬼怒沼(2時間)オロオソロシ沢(1時間50分)湯沢峠(1時間)丸沼


湯沢峠

日光沢の滝

鬼怒滝下段15㍍

鬼怒滝上段15㍍

2段10㍍滝

2段10㍍滝落口

15㍍滝

鬼怒沼

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