赤城五輪尾根の第3弾です。峠越えはできません。禁断の領域に少し足を踏み込んだだけです。足利の石尊山の項で0.01kmを示す道標を紹介しました。今回は2000倍の距離を示す道標を紹介します。手元にあるガイドブックでは上毛新聞社刊の「私が登った群馬300山」(横田昭二)の下巻に掲載された『船ケ鼻山』と同じく上毛新聞社刊「赤城山花と渓谷」(青木清)の『野坂峠から薬師岳』に野坂峠から沼田方面に足を踏み入れた記述はあるのですが、いずれも峠道を歩いた話ではなく、船ケ鼻山と鷲巣山に登った話でした。

大沼畔の顕彰碑の辺りに駐車して、熊谷市立赤城山の家を目指します。さいたま市立赤城少年の家同様、登り口の道標はありません。建物の脇から山に入ります。雑木林の中の気分の良い道ですが、さいたま市の方が手入れされていました。やや単調な道ですが、尾根の野坂峠の道標あたりは、なかなかの展望です。右折して、薬師岳方向に向かうとすぐ、左手に問題の道標があります。これも野坂峠の道標です。柱には野中峠と書かれています。下に取り付けられた道標に『至 沼田20km』と書かれています。利根村が沼田市に合併されたので、五輪峠からすぐ沼田市の市域で、黒保根村を合併した桐生市とは市域を接していますが、合併前の健全な距離感覚を持った一般人にとって沼田市は煙霞の彼方です。
知らない道に出会って、この先はどうなっているんだろうと、好奇心にかられて歩き出すのも一般人としての健全な感覚です。二本の足だけで20kmの山道なんか、歩けるかというのも一般人の健全な感覚です。あれっ。穴山から好奇心に負けて、からっ風街道まで歩いてしまって、赤城県道を箕輪まで歩いた登ってきた奴が。危ないなぁ。近寄らないようにしようかなぁ。
少しだけ、ほんの少しだけですが、歩いてみました。尾根をへずるように道が付いています。薬師如来のピークには尾根通しで登れそうです。微かですが、人の歩ける道が尾根上に付いています。アリノトワタリと呼べば呼べるような痩せ尾根を通って尾根は下ってゆきます。人跡二踏(私の知る限り通った方はお二人なので)の手ずれしていない良い道です。調子よく下っていると、どうなるかわからないので、強固な意志を持って引き返しました。楚巒山楽会の会是です。“山に入る時は登る勇気の四倍の引き返す勇気”。2万5000図には、沼田まで行かずに北面道路に出る道も書かれています。一度心惹かれた道標です。いつかはと思っています。

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