栗生山

 桐生みどり

 赤城・袈裟丸両火山の間にある地域は地質学上、渡良瀬東岸の足尾山地の一部であり、古生代後期から中生代前期の足尾層群が広く分布している。この区域には顕著な峰が少ないが、唯一地形図に名前が載っているのが栗生山(968m)である。栗生山は全山ペルム系のチャート岩体から形成されている。岩質が同じなので鳴神山を小さくしたような印象を受ける。

明治初期に編纂された上野国郡村誌上田沢村には次のように記載されている。

 当村ノ最高峯ニシテ本村ヨリ左折壱里許奇石怪巌樹木蓊欝ノ間ニ屹立ス 山頭ヨリ三分シテ一ハ南鷲手山ヲ抱キ 一ハ西方ニ山脉ヲ延テ高倉小出ノ諸山ヲ連接シテ下田沢村ヲ釜底ニ視ル 一ハ北ニ山脈ヲ延キ陣場光石大荷場手花之諸山(公有ニ属ス)虎ノ如ク豹ノ如ク官林ノ諸山ト積翠ヲ競フ 

 栗生山は栗生神社下の駐車場から山頂まで標高差350m、1時間半ほどで往復できる。市街地から半日あれば充分であり、山麓の栗生神社や周辺の文化財を見ながら訪ねるのに丁度よい。神社の階段下に数台駐車できる。栗生神社は栗生山の南麓にあり、本殿は群馬県の重要文化財に指定されている。祭神は新田義貞の重臣栗生左衛門頼方とされている。8世紀の創建と伝えられる神社の祭神が14世紀の人物というのも不思議である。創建年代の誤りか、後に祭神を神社名と同じ人物に変えたのかもしれない。1790(寛政2)年の建立で、黒保根出身の名工関口文治郎の文様彫刻で囲まれている。本殿の東側には群馬県指定天然記念物の大杉がある。口承によるとこの大杉は神社創建の丁度百年後、807(大同2)年に御神木として植えられたとされている。赤城山を含め大同2年開山の山が余りに多いので事実ではないと思うが、推定樹齢千二百年とされている。目通り7m、樹高46mの巨木である。赤城神社や榛名神社でもこのような大木を見たことがなく、一見の価値がある。

 登山道は神社の西側に付いている。いったん舗装された急な作業道に出るが、再び山道になる。急な杉林を一気に登って高度を稼ぐ。チャートの巨岩がごろごろした斜面に杉が根付いたのが不思議である。植生が雑木林に変わるとまもなく尾根上に登り着く。登山道から分岐する右の踏跡を数十m行くと岩の傍らに新しい祠が祭られている。戻って少し行くと二等三角点が設置されている山頂に着く。傾斜が強く距離が少ないので歩き始めて40分ほどで着く。山頂は展望が悪いのでそのまま更に一、二分行くと岩が露出した展望台に出る。天気が良ければ袈裟丸山と赤城山の展望が素晴らしい。市街地から見るのと違って距離が近いので迫力がある。下りは30分ほどで着いてしまい、山歩きとしては少し物足りないと思うかもしれない。

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