根本山から三境山

      桐生みどり

    

根本山から野峰及び氷室山に連なる稜線上には昔から道があって街道の役割を果たしていたのに対し、三境山への稜線には山仕事以外の道はなかった。この区間には山歩きの目的地になるような峰がないうえに杉・檜の人工林が多く、魅力に欠ける感は否めないが、藪がなくて意外に歩き易い。林道三境線の分岐を起点に中尾根を登り、根本山から三境山に縦走して周回することができる。

 根本山頂から尾根伝いに踏跡が付いているが、通常は中尾根十字路から山腹に付けられた道を辿る。2分ほどで左に根本沢登山道を分け、右の山腹に付けられた道を行く。行く手にはこれから向かう稜線上の峰が見える。根本山と三境山を結ぶ稜線で最も顕著な峰で、山歩きの人は通称三角山と呼んでいる。品位に欠ける名前だが、地元に山のことを知っている人がだんだんいなくなり、山名が分からなくなっているので仕方なく通称名を用いている。明治35年の根本山全景図には根本山神社の背後にこの山らしき峰が画かれており、薬師岳の山名が記載されているが、この図は江戸時代の絵図を基に画いたものと思われ、位置を正確に表したものではないのであてにならない。

やがて道は山頂から延びた主稜線に出る。急な尾根を下り、南側を巻く。鎖とロープが固定された急斜面を横断すると再び尾根上になる。小さな突起を越えると黒坂石への分岐となり、稜線を登り詰めると主図根点が設置された三角山頂上(桐生市地形図標高1118m)に着く。途中で左に道が分岐しているが、この道は山頂に登らず、南側を巻いている。根本山から三境山への稜線は梅田側(南)が杉林、東(あずま)側(北)が雑木林になっている。次の1091mの突起には石祠があり、「文政十三寅九月吉日」と記されている。石祠は西暦1830年の造立で、山仕事の安全を祈願した山神様だと思う。道を辿ると南側を巻いているので見過ごしてしまう所だ。次の突起で白浜山への尾根が分岐しているが、明瞭な地形なので注意していれば針路を誤ることはない。三境山の北鞍部手前で南側を巻く箇所があり、道の下に湧水と鹿のヌタ場が見える。行く手には三境山の山頂が見える。北側からの三境山はまさに兜岩の名に相応しい形をしている。

山頂から5分ほど南に下った露岩帯で左に屋敷山沢へのルートが分岐しているが、通る人が殆どいなくなった現在、初めての人では踏跡を見付けるのは難しいだろう。急斜面を下って杉の尾根に出たらすぐ右の沢に下る。道は殆ど残っておらず、沢伝いに下る。朽ちた伐採木が沢を塞いでいるので歩き難い。やがて古い作業道跡に出ると5分ほどで林道三境線に着く。後はのんびり対岸の丸岩岳方面を見ながら林道を辿る。

屋敷山沢は通る人がなく荒れているので、慣れない人は三境トンネルまで稜線を辿った方が無難だ。林道歩きが長くなるが、トンネル北側まで整備された登山道がある。小さい上り下りがあり、雑木林から植林帯になると稜線から北側(右)に下る道が分岐する。電光形に斜面を下り、ガレの窪に出るとトンネルの北側に下り立つ。トンネルを潜って林道を辿り4kmほどで駐車地点に着く。

林道三境線分岐(1時間30分)中尾根十字路(1時間10分)三角山(50分)白浜山分岐(1時間)三境山(50分)三境線(30分)林道分岐

三境山(40分)三境線(1時間10分)林道分岐

三境トンネルの写真は楚巒山楽会代表幹事

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