赤城・黒檜山

桐生みどり

 合併で赤城山の東半分が桐生の山になった。主な山は黒檜山(1828m)・駒ヶ岳(1689m)・長七郎山(1579m)である。桐生側から赤城山に登る道は花見ヶ原から黒檜山、利平茶屋から鳥居峠、梨木温泉から茶ノ木畑峠などがある。大洞側のコースは賑わっているが、桐生側のコースはこれまで裏道扱いで案内書にもあまり紹介されていない。また、赤城山に行く場合、大洞より市街地からずっと近いのも利点だ。静かな山歩きを楽しめるので合併を機に赤城山に目を向けてはどうだろうか。

花見ヶ原・利平茶屋キャンプ場
 旧桐生市域の山は低山ばかりで夏は暑くて行く気にならない。私は夏に避暑と山歩きを兼ねて花見ヶ原・利平茶屋によく出かけるが、利平茶屋で野外炊飯(バーベーキュー)している人達がいるくらいで花見ヶ原は閑散としている。真夏の桐生川上流は水遊びや避暑で道路が渋滞するほど混んでいるのに…。
 花見ヶ原・利平茶屋は標高が高く涼しいので避暑に絶好である。バンガローかテントに泊まって涼しい早朝に山を歩けば快適である。私は午前中に山を歩き、午後は木陰で寛いでから帰ることが多い。先日、黒檜山頂で花見ヶ原から登って来た子供達に会った。大型バスで来て野営しているという。この二つのキャンプ場を市内小中学生の野外活動の場として活用できないものだろうか。夏休みに林間学校を実施するとか小学校で行っている宿泊体験学習の場所にしてもいい。キャンプを初め登山・避暑などに市民(広域圏住民)がもっと利用するようにして新しい桐生の資産を大切にしたいものだ。
 
花見ヶ原から黒檜山
 黒檜山は赤城山の最高峰で、日本百名山を目指す人でいつも賑わっている。私は百名山ブームに否定的で苦言を呈しているが、市内に日本の百名山に数えられる山があるのは凄いことだ。市民として誇りに思い、大事にしたいと思う。
 花見ヶ原は黒檜山から東に延びる溶岩台地である。溶岩は十数万年前に黒檜山中腹から流出したと考えられており、花見ヶ原溶岩又は黒檜山溶岩と呼ばれている。自然休養林になっており、野営場(キャンプ場)が整備されている。黒檜山に登る道は首都圏自然歩道(関東ふれあいの道)に指定されているが、余り知られていないので登る人は少ない。樹林帯の中で展望には恵まれないが、春から秋までキャンプ場利用者のハイキングコースとして利用されている。
 頂上まで4kmで0.5kmごとに立派な指導標が建っている。樺とつつじが多く、明るい樹林帯が頂上まで続く。この道は起点の標高が約千二百mで標高差は六百m程度に過ぎないが、距離があるので大沼からの道よりもずっと時間がかかる。登山道は地形図に記載されている位置と異なっているが、明瞭な道なので無雪期に迷う心配はない。山頂まで二時間三十分程度で着く。
 初めて登った時は鳥居と祠のある場所が山頂だと思っていたが、現在は百mほど北にある三角点の位置に山頂の表示があって人が群がっている。最近はどこの山でも三角点又は最高点の位置が山頂とされているが、本来は神仏を祀った場所が山頂であり、それらしい雰囲気を備えている。この山頂には「御黒檜山」と刻まれた巨石があり、白装束姿の行者が柴灯護摩を焚くなど現在も信仰対象になっている。小俣の石尊山は古来石尊宮のある頂であるが、いつの間にか北にある三角点に山名板が取り付けられてしまった。愚かしいことだと思う。

冬の黒檜山
 花見ヶ原から黒檜山への道は首都圏自然歩道になっているが、冬季は積雪のため花見ヶ原への林道が閉ざされ、入山者は稀である。大沼から黒檜山へは雪山歩きの入門コースとして賑わっているが、花見ヶ原から行くとなると一日がかりで容易な登路ではない。通常は積雪のため花見ヶ原への道路は通行できず、県道分岐から歩き出すことになる。二月初めに一人で山頂を目指した時の記述を掲げる。
 冬型の天気で強風が吹き付け、山頂付近は雪雲が盛んに去来している。花見ヶ原まで一時間半ほどかかる。ここから遊歩道に入る。積雪は四十cmくらいだ。標高千三百m付近からしだいに急になり、はっきりした尾根上を行くが、標高千五百m付近で再び緩やかになる。積雪期はこの付近でいつもルートが判らなくなるので注意しながら登ったが、やはり道を失った。広い台地状で樹林が密生しているのでいつも進路選定に苦しむ所だ。試行錯誤してあちこち歩き回ったが、とうとう道を見付けることはできなかった。仕方がないので高そうな所を目指して適当に進んだ。この付近は密生した樹林帯のうえ地図にない突起や急斜面があるので歩き難い。山頂方向に向かっているのか不安を感じながら進む。北から寒風が吹き付け、寒さで手と顔面がたちまち痛くなる。風当たりはこの付近が最も強いようだ。やがて北側の展望が開けて頂上から東に延びる尾根が見え、標高千七百m付近から尾根がはっきりしてくる。登るにつれて樹高が低くなって視界が開け山頂が見えてきた。時間切れで引き返そうと思っていたが、もう少し頑張ることにした。休みなしで登り続け、ついに道に出た。道沿いに尾根を辿り駒ヶ岳への主稜線に出る。
 主稜線には立派な踏跡が付いていた。祠がある山頂を経て間もなく三角点に着く。かなりの早さで登ったので、花見ヶ原から三時間で着いた。
 時間が遅いので早々に下山を始める。休みなしでひたすら下り、なんとか日没前に車に辿り着いた。休憩なしの苦しい山行だったが、冬の黒檜山を山麓から歩き通した充足感があった。

                         

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