桐生山野研究会

冬の利平茶屋遊歩道

桐生みどり 

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三段の滝位置図

 凍結した三段の滝を見るため、一人で利平茶屋遊歩道に向かった。利平茶屋までの道路はひっそりしていて車の轍さえない。積雪が多く、工事用道路から遊歩道に入る所は輪かんじきを着けていても膝上まである。前日まで2日間降雪が続いたためか、今までで最も雪が深い。これではとても行き着かないと一瞬思ったが、雪山のラッセルは諦めないで少しずつ行くしかない。大変なのは最初だけで覚悟が決まれば後は黙々とラッセルを続けるだけだ。今まで最もきつかったラッセルは鹿島槍ヶ岳赤岩尾根の急斜面で、積雪が胸近くまであって二人で交代して三十分で十bしか進めなかった。日光の戦場ヶ原から男体山を目指した時は平らな場所で積雪が股まであり、二百b歩いた所で早々に諦めた。それに比べれば大したラッセルではない。積雪は軟らかい場所がずっと続くわけではなく、硬い所もあり、継続していればそれなりに行程は捗る。
 稜線に登り着くとベンチがあったので小休止した。稜線上は風当たりがいいので積雪は少なく締まっている。少し行くと対岸に三段の滝が見えてきた。2月とはいえ完全に凍りついた厳冬の姿である。凍った水流が一本の線となって三段の断崖に弧を描いて連なっている。両岸の崖が積雪で白くなっているので無雪期よりも傾斜が緩く見える。無雪期では滝の直登は不可能であるが、氷が階段状に積み重なって傾斜が緩くなっているでアイスクライミングをやっている人なら登れるだろう。
 そのまま数百b稜線を辿り、ベンチのある下り口に着いた。ここから三階(山崖)の滝方面へは通行止めになっている。自己責任で通るにしてもこの下りは斜面がきつく、鎖場もあるので積雪期には慣れた人以外は踏み込まない方がよい。稜線から下り始めると再び深いラッセルになり、滑落しないよう慎重に下る。鎖場の横断は足場が悪く苦労すると思っていたが、輪かんを履いたまま通過できた。三階の滝は完全には凍っておらず、一部水流が出ていた。凍ると傾斜が緩く見えて迫力に欠けるが、直登困難な下段はアイゼンで容易に登れそうだ。最後に吊橋を渡って広場に出て一周3時間で利平茶屋に戻った。

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深雪の斜面 駒ヶ岳遠望
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稜線に出た所 稜線から長七郎山
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三段の滝 稜線上
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鎖場の横断 凍結した三階の滝

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