とうとう恐れていた事態がやってきました。地図が使い回せない!
ということは代表幹事未踏の道です。もちろんそんな所に代行ひとりで行けるわけはなく、いつもお世話になってるあにねこさんが足を痛めているのにここを歩くというので便乗です。いくら健脚の方でもハンデのある時ならついていけるかもしれない。
そんな小狡いことを考える代行にとっては童子といえば酒呑童子や茨木童子、あるいは八瀬童子の方がなじみが深い。不動明王さまの眷属といっても制多伽童子と矜羯羅童子くらいしか知りません。ほんとに三十六人の童子に会えるのでしょうか。霧雨が煙るのでもし本格的に降って来たら戻りましょう、とあにねこさん。

大崩林道をぎりぎり奥まで車で入っていただきました。林道はかなり荒れています。本来なら金沢峠の方へ延びる林道との分岐あたりに駐車した方が車を傷めずにすみそう。
古い「三峰山登山口」の看板から薮に覆われた山道を登り始めます。がらがらした沢を縫い薮をかき最初からうっすら汗ばむ。赤いひらひらしたテープのあるところで沢を渡れば大きな杉に囲まれた石祠。そこから杉の植林の中、右手に沢を見て道だといわれれば道のような気もする斜面を歩きます。あにねこさんの予習は的確で、ハイトスさんが下る時に大巻きしたという崖の下に着く。正面と左手をほとんど垂直の大岩が塞いでいる不思議な場所です。
この左の岩は深く抉れて岩屋になっており、ここに不動明王がいらっしゃる。炎を背負い右手に剣、左手に縄、彫目がしっかりしているのは新しいからか岩屋の中なので風化しにくいからなのか、文字が入ってない像なので判別できません。両方向からの岩の間には落石が挟まり、今日はしっとり濡れているだけですが雨が降ればけっこうな落差のある滝になりそう。
さっきまでの霧雨もやんで、もう雨は心配なさそうですが雲の低い日なのにここは妙に明るく、いかにもなにかがおわすような気になります。とはいえここまでもう一度ひとりで来るなんてできそうもない。踏み跡が錯綜しています。

さてこの崖を巻いて上を目指す道は全く道とは言い難い。急な斜面を一歩一歩踏みしめてずり落ちないよう要注意。ハイトスさんはともかくおK3がよく降りた、ひょっとしたらこの時の下りのために藪山が嫌いになったんじゃないかしら、と言いあいつつ崖上に到着。にょきにょきと岩塊が、樹木を纏って現われる。
これをえいやっとよじ登ってみます。登って良かった、上は稜線が伸びて絶景です。向かいの山並みが霞んで、石祠が三基。一つだけ寛政元年の文字が読めますが残念ながらお祀りしてある神さまは判読不能。稜線の突き当たりにちんまり鎮座する石祠には、その先が切れ落ちているので近づく勇気がありません。石祠の後姿と色づく木の葉ごしに三峰山の稜線がのびやかに見える。
このコース、もっと整備したら桐生でも出色のコースになることうけあいです。

ちょっとした冒険心が満足してまた植林の中、積もった杉落葉や枝をばりばり踏んでゆけば、首の落ちた二つの石像に出会います。片方は傍らに首があり、憤怒の形相で剣を掲げている、これも不動明王ではないかしら。もうひとつは首は見当たらず左手に鐘を持っている。切り口を見れば、自然に落ちたのではなく廃仏毀釈のせいかもしれません。その先には○山大権現(○は代行には読めない字)の苔むした丸い石碑。古い信仰の山だったことが偲ばれる。
その先いよいよ三十六童子の登場です。三つほど童子碑を過ぎれば、ようやく道らしいものが現われ「三十六童子」の大きな石碑。これは新しいものかも。それからは点々とほとんど読めない、苔に覆われたり、倒れたり、台座から落ちたりした童子碑が続き、最後に大きな目をかっと見開いたこれも不動明王らしき石像が。こちらは岩屋のものとは違い髪型は大童で首は繋がっています。これも含めて26基、ただしほとんど文字が摩滅して制多伽童子も矜羯羅童子もわかりませんでした、残念。

三峰山の頂上で暖かい飲み物をいただき、食事を済ませてひんやりした空気に晒されていると、あちこちで秘やかに木の実の落ちる音がする。鳴神山から歩いて来た若い単独行の方に会った他は、愛宕神社の石祠と優しい表情の大山祇命がおわす静かな静かな山頂でした。

金沢峠までの楽しい稜線歩きの後は、またもや代行ひとりでは絶対辿れない沢筋を下ります。なんで大々的に標識に「川内五丁目」なんて書くんだろう。標識のすぐ先まではしっかりした道ですが、あとは細くあやふやになり、そのうち道は消えてしまう。地図が読めず従って標識頼りの代行など、ひとりなら途方にくれて泣くしかない。標識をつけたからには責任持って、道の整備やせめてテープくらいしっかり用意してほしい。距離はそんなに長くないけれども初心者や初めて歩くひとには、心細くなるような荒れた下りでした。

桐生の里山はそんなに鮮やかな紅葉にはなりませんが、秋が深まってくるにつれてこの山域は楽しめそうです。ま、代行の場合はガイドブックにある稜線歩きになりそうですが。

(代表幹事代行)

楚巒山楽会トップへ やまの町 桐生トップへ

inserted by FC2 system