その2 はとこがくれた明治時代のカメラ

かつてベスト判という、フィルムサイズがありました。イーストマンコダック社が作りだしたフィルム規格の一つで、ブローニー判と呼ばれる120のフィルムサイズより、少し小さく、127と呼ばれていました。
コダック社は、フィルムを販売するために多様なニーズを掘り起こさんがため数多くのフィルム規格をでっち上げてきましたが、35mmと120以外で未だに購入できるのは110位でしょうか。127は今でもアグファが発売しているようですが。

コダックのカメラでベスト判、単玉と聞くと、クラシックカメラファン垂涎の的、いわゆる「ベス単」を思い浮かべる方が多いでしょうが、ここで紹介するカメラはベスト判で、レンズは単玉ですが、ポケットの蛇腹のカメラではありません。ボディがベークライト製のオモカメです。小学校の高学年か、中学生になった頃に、はとこが「これは明治時代のカメラだぞ」といって、皮ケースに入ったカメラをくれました。
ヨタでしたが、けっこう長い間、信じていたように思います。こどもに嘘をいってはいけないという教訓です。
レンズまわりにはBROWNIE・127と書かれています。レンズの上の突起はシャッターを開いたままにする装置、いわゆるバルブ。下のひょうたん型の金具がシャッターです。シャッターはギロチン式1速です。底面にはシャッターと同じ形をした金具が着いていて、MADE IN U.S.A. BY EASTMAN KODAK CO. ROCHESTER N.Y.と三行にわたって書かれています。フィルムの巻き上げは右上の大きなノブをまわし裏側の赤窓で数字をあわせる方式です。ファインダーは折り畳み式ですが、私が貰ったときから部品が欠損していて、折り畳むことができません。
で、大人になって調べてみました。コダックのベビーブローニーという名前で、戦中から戦後(第二次世界大戦)すぐにかけて作られたものでした。1930〜1940年代のものです。8cm×8cm×8cmの立方体で、重量はフィルムが入って200g位。70年近く経過しているのに、シャッターは快調に作動します。アグファは白黒、カラー両方のフィルムをだしているようなので、カラー撮影も可能です。

ディスクカメラと呼ばれたカメラがあったのをご存じでしょうか。1982年にコダック社から発売された、カートリッジ式のフィルムを使うカメラです。カートリッジの中に15枚の小さなフィルムが円盤状(15角形/縦長)に並べられ、シャッターを切ると内蔵のモーターで円盤を回転させ、フィルムが送られます。クローズアップと全景のレンズの切り替えはありますが(レンズ下のスライド式のレバー)、シャッターを押すだけで露出はカメラ任せ、固定焦点式で、ストロボも自動発光のお手軽カメラでした。円盤の回転もストロボの発光も内蔵されたリチウム電池が賄い、電池が消耗してもユーザーが電池交換をすることができません。ですが、驚いたことに2007年でもシャッターは切れ、フィルムも回転します。メーカーでは5年間の保証をしていましたが、購入当時、けっこう使ったのに、フィルムと現像のシステムさえあれば、まだまだ使えそうです。重量は220g、今使っているデジタルカメラより少し軽い。
コダック社からはディスク4000、6000、8000が発売され、左の写真は6000です。フィルムはISO200相当の15枚撮りネガカラーのみ。シャッター速度は200分の1秒と100分の1秒の2速で、レンズは4枚構成の12.5mmF2.8が付いています。4000にはカバーがなく、クローズアップレンズも付いていません。8000のカバーにはアラームつきの液晶デジタル時計が付いていました。8000にはセルフタイマーも付いていたかな。8000が欲しかったのですが、確か1万円位、高かった。
鳴り物入りで発売されたのですが、日本のカメラメーカーからの参入はあまりなかったようで、10年くらいで消え去りました。ベビーブローニーのフィルムは120のフィルムが製造されている限り、何とかすれば流用はできますが、ディスクフィルムは厚手だし、一枚一枚切らなければいけないし、カメラは生きているのに使うことができません。日本製のリチウム電池が使われていたそうで、恐るべし日本の電池メーカー。
ハニメックスのディスクカメラも所有していますが、大きさやシャッターボタンの形状や位置、カバーなどはほとんど同じ。違うところは、クローズアップレンズの切り替え方が回転式、電池が単3電池2本使用、ストロボの発光が自動ではない、などです。

以上、消えたフィルム規格のカメラ2種でした。

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