山の紀行

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*起きれば秋。上天気で乾いた空気がひんやりしていてこれはもう近くの山を歩けという山神さまのおぼしめし。超特急で用を済ませバスに乗ります。

車窓から見える栗生山の登り口は曼珠沙華の大群生。写真を撮りたくなってこちらにしようかと少し迷いましたが、まだ前回の蛇への恐怖が残っていて薮っぽい山はもう少し寒くなってから、本日は桐生のお子さまたちが登るという朴の木山を目指します。
前夜情報を頂いた野外センターにお寄りして丁寧な説明と詳しい地図を貰って、すぐ後の階段が登り口。ただ前夜の話では熊が目撃されたので鈴を持ってくるようにとのことでしたので、ちょっとどきどきしながらの出発です。

鈴の音が恥ずかしいほど整備された道をお子さま用の地図を見ながら進みます。赤城山の噴火で堆積したという軽石層があり、啄木鳥の穴は見つかりませんが、ゆったりと九十九に切られた山道が始まると番号を振られた朴の木があり、登られる方、野外センターでこの地図を貰いましょう、けっこう面白い。すぐに展望櫓に着きますが残念ながら補修待ちで今は登れません。櫓の上からは梅田湖の眺めがいいらしいけど、今日は高い空の青だけです。
要所要所にしっかりした看板がつけられた尾根道を辿れば左から林道が合わさって、そちらに下れば忍者コース、後沢に下ります。まっすぐ林道を登りたくなりますが、ここは一番右、急な尾根が正しい道。すぐにマンガン鉱の跡だという深く抉れた場所があり、さてここからがそれはそれは急登です。

野外センターの方が這うようですと仰って、子どもが登る道、そりゃオーバーなと思ったのですが時々は張り出した木の根に掴まるような道。子どもといっても小学校の高学年ならスタミナ以外は大人より勝るわけで、随分昔におとなになった代行には思ったよりハードで、時々立ち止まって息を整えます。
杉の斜面は涼しくて物音ひとつしない静けさ。ただ杉林の悲しさ、秋らしい植物は登り着くりす平までひとつもありません。

りす平からはだらだらとした登りであっという間に朴の木山山頂。600mくらいの山なので途中見つける花もイヌハギやキンミズヒキなど里と同じ花ばかり。看板がなければ行き過ぎてしまうくらいちんまりしたピークですが、ちゃんと朴の大木があり、大きな枯葉も散らばって名前通り。みっしりと茂った葉が大きく揺れて、今まで静かだった風音がここでは大きな音で休みなく吹き渡る。
まだ新しい大きな山名標が倒れていて、大きな傷はひょっとしたら熊さんかも。
暖かい紅茶に少しお酒を落としてのんびりと風に吹かれて、頂いた地図には展望がいいと書かれているけど、行手の仙人岳と樹間に鳴神山脈くらいしか見えないのはまだ繁茂期だからでしょうか。

下りは梅田湖の矢印を頼りに。よく手入れされた杉の植林の間を登路より緩やかな道が続き、看板もたくさんあるので迷うところはありません。
下り着けば正面にダムに水没した飛駒小学校の校門があり、ここからは舗装道をてくてくバス停に戻ります。路傍には慎ましやかに秋の小さな花が咲き乱れ、途中大州の水を味わって、秋の陽射しのひとり歩き、お薦めです。

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