山の紀行

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*この季節になると城山を下から眺めてはその色が桜色に染まるのを心待ちにして、けれども全く花の咲かない年があり、昨年も下の方がいくらか白っぽくなっただけですぐ新緑に覆われてずいぶんがっかりしたのでした。
今年は大雪のせいなのでしょうか、下の桜がまだ散りもしないのにあちこちの斜面に白い色が目立ち始め、城山も暖かい日に一気に桜色を見せて、まだ早いって掲示板に情報を頂いたのに我慢できずに歩いてまいりました。

コースはもう日枝神社からに決まっていて、神さまに手を合わせるのもそこそこに案内板のある登り口へ。倒木が増えた山道を登れば左手に桜の斜面が木々に見え隠れして足も弾みます。
雷電社に形ばかりご挨拶して裏側から左手斜面へ踏み入れば目の前一杯に桜のお出迎え。ひょひょひょ〜いと口笛を吹きながらあっちへふらふら、こっちへふらふら。この桜の植林のために低めに切られた何層もの段をゆっくり歩き回ります。柔らかな足元には色の違う菫たちがひっそりと開いて、上を見れば陽を透かせて白銀色に見える桜がびっしり。春です。

桐生市には桐生が岡公園をはじめたくさんの桜のいい場所がありますが、城山は山火事の跡の東斜面を埋めるためにと植えられただけで特に公園として整備されているわけではなく、野趣に富んだ花が楽しめます。木枠で押さえられた階段を頂上へと急ぐだけでなく時間をかけて花の中を彷徨うのは楽しい。
ときどき小さなお子さんを連れた方が下ってきて、本日は”こんにちは”より”咲きましたね〜”がご挨拶。鳥のさえずりが高くを渡り、目の限りの桜というのはなんだか気持ちが優しくなってどなたと会ってもついにこにこしてしまいます。

視点が高くなれば桐生川の向こう、仙人ヶ岳へ続く稜線も花に覆われ、見下ろす市街も花の下、北を見れば高い峰が花の上に覗き一年のうちのほんの数日の豪華な眺めです。頂上が近くなると枝には蕾も目立ちだしまだあと数日は楽しめそう。
斜面に満開の花をつける椿やツツジの灌木が増えてくればすぐに城址の一段下につけられた遊歩道と合流します。
ここで上の駐車場から歩いて来たという遠来の女性と一緒になってしばらく天辺でお喋り。初めての来桐だそうで、ずっと植林帯を歩いてほんとうに桜があるのか心配だった、道が分かれているところに案内板がなくて不安だったと仰ってました。遊歩道もできてから時間が経って、今年はどこもそうでしょうが倒木も多く、こまめで適切な整備が欲しいところです。

大休止のあと帰りは碧雲寺への尾根へ。こちらは桜の斜面の一番北側を掠めて植林帯を下る道で、やはり崩れた個所や倒木が増えていました。山だらけの町だからなかなか全ての山にお金をかけるわけにはいかないのでしょうがちょっと残念。桜の季節には遠くから来る方が多いいい山なんですが。

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日枝神社の案内板
少し荒れ気味の山道
雷電さまの左手へ
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桜の斜面
菱の山稜
仙人ヶ岳も花の中
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桐生市街は花の下
植林帯を下る
下からの桜化粧

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