山猫さんと唐沢山の話をしていて、どうも話が合わな
い。唐沢山に古城址や神社があったっけ、あそこで松茸が採れるのかしら。それもそのはず山猫さんの唐沢山と筆者の唐沢山は場所が違い、えーっ、桐生に唐沢
山があるのですか(驚く山猫)ちっちっち、地元の方とも思えない、唐沢山といえば八王子丘陵に決まってるじゃありませんか、ご案内しましょう(故なく威張
る筆者)ということで行って参りました。
ご案内、なんて言いながらついでに神籠石の現状調査と稜線の太田市の遊歩道の視察までしようと勝手に企み、賀茂神社からが一番、なんて山猫さんをだまくら
かした報いはすぐやってきて、何度も来ているのにどうしてこの山域では何度も迷うのでしょう。ここにはおろおろ虫が住んでいるのか、筆者の脳の欠陥なの
か、このあたりを幾度も幾度も歩いた代表幹事がこっちもあっちも歩けと呼んでいるのか。地図の赤線が示す通りに今回も大迷走です。
岩石祭祀学のMURYさんが仰る通り、歩き始めはしっかりしていた道は台待窪を過ぎたあたりから大荒れで、蔦の絡まる倒木、雨で流れてしまった踏み跡、崩
れる沢筋、こんな季節なのに盛大に茂る緑濃い龍の髭や羊歯。ううむ、ううむと唸りながら飛んだり潜ったり跨いだり、滑ったり躓いたり踏み損なったり、行き
過ぎたり行き止まったり行きあぐねたり。
神籠石のあたりは猪の掘り跡と積もる落葉と伸び放題の細い枝でちょっと荒涼として、それでも遠目から真四角の石は目立ちます。ほんとに神さまが降りるので
すか、と唯物論者の山猫さんは少し鼻で嗤いながらも筆者のお喋りに付き合ってくださって、ね、ね、そんな感じがするでしょ、なんて近寄ってみると、ショッ
ク!当会の名誉顧問が作ってくれたあ
の看板がない!あんなに頑丈に留めていただいたのに支柱だけが残っていて、しばし茫然。少し周りを探しましたが破片も見当たりません。しくしくし
く。
あんなに大きな地震があったり、絶対安全のはずの発電所が壊れたり、この世に起こらないことはないと気を取り直し、沢の分岐に戻って尾根へ。今日も汗ばむ
ほどの上天気で散り残りの小楢の濃い黄色が青空に透け、木に残る実を啄みにくる鳥の声が賑やかです。
稜線上は道の両側が綺麗に払われて二柱神社からの道も判りやすくなっていますが、文字の薄れた古い看板しかないので、桐生側から登ってくるともう少しはっ
きりしたものが欲しいところ、なんて思うのは他力本願過ぎるかな。
道そのものはほとんど弄ってありませんが最初のピークの下りには木の階段ができていて、これは今のところ歩きやすい。
菅塩峠から重機を入れたのでしょう、ここだけは変化が激しく、綺麗に付けられた巻き道がいかにも遊歩道じみているのを嫌って尾根を選べば、らら、唐沢山消
失、危うく下ってしまうところでした。しかたがない、元に戻り新たに付けられた道を辿ります。緩やかにカーブしながら巻いているので足には嬉しいかも。
ここからの道はいくらか広げられて、樹木も少し整理され、五月蝿かった小枝がなくなり、昨年の始めにこの山稜を縦走したときは236m峰を過ぎれば篠竹の海だったのですが、全て刈り払われ太田側の眺めが開けます。
山そのものの面積あるいは市の財政が全く違うのですからあれこれ言っても始まりませんが、太田市長が自負する通りこの整備、歩いてくださるひとが増えるな
ら及第点かもしれません。あとはこれを維持すること、なんて筆者、何様のつもりなんでしょうか。
とはいえ唐沢山頂上は凄い変わりようです。東屋のことはずっと聞いていたので驚きはしませんでしたが、視界を邪魔していた木がいくらか伐採されて渡良瀬川
が眼下を流れ、橋や道路や建物がはっきり見え、山猫さんは渡良瀬川の鴨まで見えると主張します。仙人ヶ岳、小俣の石尊山をはじめ足利に延びる山並み、赤城
山も眺められ、草に覆われていた三角点と赤色の石祠だけが目立つすっきりした天辺。
この整備のお蔭でしょう、祠に上がるお賽銭の小銭の多いこと。下の岩場の石尊宮(とりでんさま)も同じなのかしら。余裕ができてきっと太っ腹だろう神さま
に、最初の迷走で山猫さんが呆れていないように、また付き合ってくださるようにとお願いし、ついでに神籠石の看板が見つかりますようにとお願いし、早く景
気が良くなりますようにとお願いし、世界がすべて幸せになりますようにとお願いし、そんなにお願いしたのにお賽銭をあげるのを忘れたのですからひどいも
の。
まだ木の香が残る東屋でゆったりと昼食をとったあとは菅塩峠を下ります。
それまで歩いた道と比べるとそれはそれは悲しい荒れようです。倒木で道が塞がれた個所がいくつもあり、沢は無惨に大きく崩れ、踏み跡の大半はあやしくなっ
て、古いテープはいくつか残っていますが最近ひとが歩いたような様子はありません。猪の痕跡ばかりでぬかるみを這うように歩く筆者も猪気分、ぶひぶひ。
もっとも太田側は直下まで新しい舗装道が入っていて、それもまた風情なく、峠そのものは頗る感じがいいのに整備し過ぎもしなさ過ぎも、勿体ないというか、
切ないというか。
再びあちこちをおろおろ迷いながらなんとか賀茂神社への沢を渡る橋へ到着。代表幹事と歩いたときはこれを渡った覚えがあるのですが、もう朽ちきって橋板が
失くなっていてそれもまた切ない。崩れやすい土を踏んで橋の下に潜り込み徒渉しました。
出たところが賀茂神社から最初の墓地の分岐。
いい周回コースだと思うのですがこのまま放っておいたら無くなってしまう道なのかもしれません。上の神さまに桐生市がお金持ちになるよう頼んでくれば良
かった。
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最初の分岐(右へ進み左から戻る) |
道は荒れている |
神籠石が見えてくる |
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看板がなくなってる! |
上がった稜線にはしっかりした道 |
新たにつけられた階段 |
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菅塩峠の巻き道 |
広く明るくなった |
東屋のできた頂上 |
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本来の菅塩峠 |
荒れ放題の沢筋 |
もう渡れない |