金葛逍遥

*いまひとつお天気がすぐれない日曜日、久々に来桐した会長と墓参を兼ねて山歩き。代表幹事が余り誉めなかった金葛の遊歩道は、看板や熊除けの鐘が増えて賑やかで、筆者もときどき歩くのですが必ずどなたかと出会い、今や桐生市民に愛される道のようです。

桐生川・中里橋を少し穴切方面に進んだ右手、金葛環境保全林の看板から山側に入ると小さな駐車スペースの前には白梅が満開です。本日はカタクリ山への標識がある小さな木橋を渡って杉と檜の混在する林の中へ。
この山域には整備された遊歩道と昔から踏まれた山道が交錯して、遊歩道の分岐には手づくりの幾種類かの標識が立てられています。斜面は枯葉で覆われて目を凝らしますが今年はカタクリは遅いのか葉っぱも見えません。

両側に埋められた丸太がいくらか古びて馴染んできた遊歩道が、中里に下るあたりで稜線に向かった山道に入ります。やはり当山楽会は整備された道よりこちらが好き。ほんの暫く息を弾ませれば、またおなじみのまっすぐな遊歩道に出会って、登り切ったところには横たわるお釈迦さま、一色山の山頂です。お釈迦さまの後には文字がなくなった楚巒山楽会の看板の残骸がかろうじて木にひっかかっています。
向かって右側の細いロープのある山道へ入ればここが中尾根。枯葉に埋まっただらだらした気持ちのいい下り、黒川を挟んだ対岸のでんべい山から奥へ続く稜線と、白葉峠から高萩山への稜線が霞んでいて、この尾根道も代表幹事のお気に入りでした。シャベルで付けられた低い段が続いて歩きやすい。
最後のしっかりした階段を下れば泉龍院、花を供え手を合わせて再び寝釈迦まで戻ってお昼の大休止。さすがに今日は雨がいまにも落ちてきそうな空、他に歩いているひとはいらっしゃらないようで、二人だけで長々と丸太の椅子を占領し、当会はほんとに山でぼんやり時間を過ごすのが大好きであります。

ここからの帰途は雨降山への稜線の遊歩道を。真直ぐに付けられた急な道、階段状にしたところは土が流れて短足の筆者、なかなか一歩では上がれずに脇の草地を歩くことになり、そんな方も多いのでしょう、しっかり踏まれた道になっています。行手に見える展望台まで三つばかりピークを越え、残念ながら曲坂峠の当会看板は滅びていて淋しい。
それにしても途中、熊や他の獣との不意の遭遇を防ぐためかいくつもの音が出るものが設けられ、あるいは見慣れぬ山名の看板があり、電波時計まで所々にあって、ここを歩く地元のひとたちの熱意に脱帽。昨年でしたか「山と渓谷」の里山コーナーに観音山が取り上げられ、この稜線を歩く方は昔と比べれば驚くほど増えて、山は歩かれてこそ、です。まずは慶賀なり。
展望台でしばらく霞む市街を見下ろしてまたときを過ごし、周りの樹木がすっかりなくなりこんな日でなければ奥秩父や西上州の山々、北八ヶ岳、寒い季節なら富士山も望める見晴らしのいい場所で、備え付けのノートはもう何冊も積み重ねられています。東屋中央の鐘は南部鉄なのか実にいい音で調子に乗って何度も叩いてしまいました。

今回の下山には久しぶりに簡易舗装の道を歩いて、金葛山へ足を延ばし、最初は整備された筈なのにこちらを歩く方は少ないのでしょう、倒木や雑草ですっかり自然に帰っていて、頂上の色褪せた柵の存在理由がますます希薄になっています。しんみり眼下の桐生川など眺めて、降り出した小雨に濡れながら舗装道を下りました。

例年になくいつまでも寒い春、きっとこれから一気に芽吹き、一気に色んな花が開くに違いありません。お弁当を持って、どちらに降りてもすぐに人家、遊歩道だけではなく、あちこちに分岐する山道や踏み跡をそぞろ歩いていただきたい山域です。

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右側の木橋を渡る
杉林の中を
落葉に埋もれる遊歩道
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稜線への山道
おなじみの真直ぐな道
寝釈迦
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黒川対岸の山並みが煙る
中尾根大好き
泉龍院からのハイキングコース入口
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一色山へ戻る
主稜線の遊歩道
展望台から観音山と市街

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