杵島岳(阿蘇五岳)

*2014.10.17
旅の前の9月の終わりに御嶽山が噴火してたくさんの死者を出し、阿蘇山は大丈夫だよね、と言っていたら帰って来てひと月後の11月末にこちらも噴火して、あの地震以来やはり日本列島の地下は不安定な状態が続いているのかもしれません。
特にまさかの御嶽山噴火に巻き込まれ亡くなった方々に深い哀悼の念を表しご冥福を祈ります。

10月も阿蘇山は夏からの警戒レベル2が続きロープウェイはお休み、登る前日も風の向きなのでしょう噴煙は中岳を覆っていて、地元の方にお聞きすれば煙の中は息苦しくて歩けたものではないとのことでしたが、山歩き当日はほとんど無風、真直ぐに噴煙が上がっていて、まあ杵島岳なら(あなたでも)大丈夫でしょうと宿のひとに送っていただいて古防中へ。草千里と中岳の真中のここは奈良時代から平安にかけて三十六坊五十二庵と言われる大霊場があり、その後も戦国時代の焼失を経て江戸期まで繁栄したそうです。でも中岳の火口はすぐそこ、小噴火はたくさんあったろうに修験の道は厳しいなあ。現在はすっかり摩滅した石塔がいくつか道路脇に集めてあります。

ここから噴煙を背に簡易舗装の道を緩やかに登ります。右側は古い火口跡が草原状になって柔らかに起伏し、小さな池があったり牧草地になったり優しい眺めです。ミヤマリンドウがちょうど盛りで目を凝らすと花叢がずっと続きます。
道の正面はこれから登る杵島岳がのっそりと聳え、振り返れば中岳の火口が休みなく噴煙を吐き出し、左手は外輪山の山並が切れ目なく続いて、その間には緑濃い林と淡い緑の田園と小さな集落の屋根。外輪山の向こうに霞むのは九重連峰です。このあたりは樹木のない草原の連続なので景色にも独特の開放感があり、ああ阿蘇山を歩いているんだと足も頭も大満足。最も毎春の山焼き、現在は人手が少なくなって裾の方は植林が進み地元の方々はこの景観を守るのに苦労なさっているのだとか。

展望台に登り着くと爽やかに風が吹き渡り、杵島岳は大きく眼前に迫って優しげな緑に覆われていますが、良く見ると崩落地があちこちにあって陰翳が濃くなかなか複雑そうな山肌です。2年前の水害でこのあたりは大きな損壊を被り、根子岳など登山道はズタズタ、下のJR豊肥線もやっと最近完全復旧できたそうです。
とあちこち見回しながら歩いていたら、旅行前に計画していた杵島岳と往生岳の鞍部へ出る分岐を見落としてしまい、結局長い長い階段の登山口へ到着してしまいました。ここを登るのが嫌だから何冊もガイドブックを揃えたのに!
仕方なく階段脇の草道を歩いたり階段に戻ったり、天辺はすぐ上に見えているのに歩けど歩けど近づく気配がない直登を汗まみれになりながら歩きます。時々すれ違う下りの方は余裕たっぷり、もうすぐですよと声かけしてもらってもその”もうすぐ”の遠いこと。

膝がギブアップする直前ぽんと開けた頂上到着。360度の絶景です。空は青く地上に近づくとのどかな薄雲になって、外輪山の曲線に昨日少し歩いた大観峰が僅かに尖り、遠く九重の山並は柔らかに融け、直下には米塚、目を転じれば往生岳までの緩やかな稜線、もっと右には荒々しい中岳の山頂と噴煙上げる火口、尚右に目をやればまん丸な草千里とその奥の烏帽子岳。足元には薊や竜胆や野菊が可憐で風は優しい。寝っ転がってしばらく草に同化しておりました。
旧火口のお釜回りは火山礫の混じる斜面や岩場風味の痩せ尾根や草地の緩やかな上下やで短いけれどなかなか変化があって面白い。往生岳へ行こうかと思っていましたが、すぐそこに見える烏帽子岳に唆られて急遽そちらを歩くことに決定。
もう一度頂上でゆったり煙草を燻らせて草千里向けてGO!でございます。下りなら階段だってへっちゃらだ〜い。まあ決して走りはしませんが。

"
"
"
古防中の石塔
火口はすぐそこに見える
杵島岳と往生岳
”
”
”
近づけば陰翳は深い これを登りたくなかったのに 杵島岳山頂・中岳は荒々しい
"
”
”
かつての火口は今は草原 ぐるりとお釜巡り
草千里と烏帽子岳

* 楚巒山楽会トップへ * やまの町 桐生トップへ

inserted by FC2 system