5月定例山行 * 代表幹事代行

*会長の追憶の熊鷹山。代表幹事が大好きだった笹の道

今年の立夏は5月5日、桐生の山はどうも夏には向かないので夏立つ前日、新緑と薫風と小滝を楽しんできました。地図が大きいのは昨年6月に歩いた根本山の沢コースをどうしても作っておきたかったから。代表幹事がいなくなってからの定例山行はちょうど一年、季節をひと巡りしました。

例によって遅い出発で三境林道との分岐の駐車スペースには車が溢れています。不死熊橋前にようやく場所をみつけて林道へ。下ではすっかり濃くなった緑もここではまだ柔らかい色で、時々混じる姥桜とツツジの色が目に嬉しい。右手に高く低くなる沢には小さな滝が連続して、水と黄緑色の木の芽の取り合わせが初々しく、確かに長いのですけれど思っていたより楽しい林道歩きです。もうすでに根本山からの周回の帰りの方と幾人もすれ違い、これからですかと驚かれる。いえいえ熊鷹だけなので、と答えればあらもったいないという顔をされて、根本はツツジがいいですよと教えてくださる。いいもん、会長と歩くときは楚巒の伝統を守って一山だけを楽しむんだもん。

昔は十二沢が記載されていたという看板のある分岐を過ぎ、左手に黄色いテープに熊鷹山登山と書かれた印から山道へ入ります。単調な林道よりやはり山道は足が喜ぶ。杉林に九十九型につけられた道を登って支尾根の稜線へ。陽射しは初夏ですが時々抜ける風はまだ早緑色、気持ちがいい。
雑木と熊笹の道にはところどころ、青い空をバックにヤシオツツジが華やかに開き、やはりこの季節の楽しみです。ここからはかつて神域であったことを示す古びた木の鳥居を過ぎれば、石祠がひとつ。ロープのある急登をひと登りすれば熊鷹山山頂です。鳥居のところでたくさんの方とすれ違ったので、展望櫓が組まれた狭い山頂は誰もいない。
遠くから鈴の音が響くのでまたすぐ混むにちがいない。今の内だと急いで360度の展望を楽しみます。代表幹事が絶賛していた野峰へ続くゆったり大きな尾根、遠く赤城と袈裟丸山、これから向かう根本への道、その先に霞むのは宝生山かしら。見ていて飽きることがありませんが、次々と根本方向から人が来る、ゆっくりしてはいられません。まだ黄色いチップが埋まっていない旧字の三角点に別れを告げます。

桐生には珍しい笹原の明るい稜線の、頂上の先の平たい笹原で遅いお昼。見たところ柔らかな気持ちのいい場所ですが、腰を下ろせば栗の毬だらけで、不用意に手をついた会長が悲鳴をあげる。見渡す限り凄い量の毬で、ここにはきっと秋にまた来て栗拾いを致さなきゃ。
落葉松の柔らかな新芽を愛で、次に登る山への期待を語り、近況報告・会員の消息、ついでに最近の心境なども話し、しみじみと過ぎた時を懐かしみ、時間はあっという間に過ぎてゆく。名残惜しく立ち上がれば、ひらひらと大きな蝶が飛び、あるいはほんとうにわたしは蝶が見ている夢なのかも、なんて柄にもなくちょっとしんみり。山は登り出すときの高揚感も好きですが、もう下るというときのこの切ない去り難さはちょっと他では味わえない気分です。

いくつかの標石と丁目石を過ぎて、1142mピークの直前に十二沢への分岐の白い看板が。ここのところ少しは鍛えられた代行が嬉々として先を歩きます。
下り出しは少し頼りないとはいえ杉の中を踏み跡が続くのですが、すぐに道型は消えて谷筋を辿るようになります。崩れた土砂と倒木の沢、後からの指示をあおぎながらえっちらおっちら、時々積もった枯葉の堆積を踏み抜いて悲鳴を上げ、土砂と一緒に水にずり落ちて笑われ、会長は常に直立しているのに高目の段差ではつい腰を降ろしてから足場を探るので叱られ、なかなか大変です。
昨年根本へ歩いたときにこの沢は大荒れだと聞きましたが、それから一年、歩くひとも少ないのでしょう、すっかり荒れきって、トロいおばさんがひとりで辿れる道ではありませんが、心強い同行者がいればこの冒険も面白い。一カ所高く巻く道があり、これが下りでは判りにくいので登りのコースにした方がいいかもしれません。
分岐に下り着けば上で会った方々が林道を下りて来て、えっどこから来たのですかと驚かれる。不死熊橋の看板ではこのコース、緊急の時以外には使うなとの注意書きがありますからやはりもう滅びてしまうルートかも。けれどもこの下りの楽しさがなかったら林道の長い歩きだけが印象の単調な山行になったでしょう。

帰って地図を作ってみれば、やだこんなに近づいたのに十二山根本山神社にお寄りしていない。これは今度の紅葉の時季の宿題にして、会長、さてどんなルートで歩きましょうか?

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