経塚山〜小倉山

*久々に当会会長と歩く里山です。定例なんて銘打っても昨年5月から半年以上ぶり。会長は昨年の9月にひとりで秩父を歩いて以来ですから、無理なく気持ちよくてできれば句などがひねれるコース、ということで代表幹事がお気に入りで代行も会長も何度か切れ切れに歩いた経塚山から崇禅寺へを立案。けれどもふたりとも連れられて歩いただけなので記憶はいささか曖昧で、妙に律儀でいつもひとを案内するときは事前に歩いてコースを確かめていた代表幹事の心配顔が目に浮かびます。

川内の公民館に車を停めさせていただいて赤城神社まで車道を戻ります。廃屋のあるあたりで会長がこのあたりから登り出した、などと思い出して、もさもさの斜面を和田山に登ったらしいのですが(確かに写真がありました)本日は手堅く神社の上の手摺の道から登り出します。
良く踏まれた気持ちのいいなだらかな道で、空は高曇りの暖かい日です。途中右手に園田山に下る道を分け高度を上げると正面に経塚山の山頂が眺められ、右手には吾妻山から渡良瀬川に流れる稜線が柔らかい。
経塚山頂の手前の小さな高まりから見下ろせば、その稜線の向こうに八王子丘陵が霞み、反対側は樹間に赤柴山脈の始まりがやはり霞んで、風のない暖かな里山日和。緩やかな広い稜線を辿ればすぐ経塚山の山頂です。
山名標や案内板がある開けた頂上からは樹間ごしではありますがほぼ360度の展望、家並を挟んで吾妻山が特徴のある形を見せ、行手にはこれから踏むピークが東に曲線を描きながら続き、その向こうに赤柴の山々が並んでいます。

小休止の後少し下って、道はテープやリボンの目印がなくとも歴然としていて、この季節この道は歩きやすくてお薦め。途中振り返れば遠くまで眺めの開ける場所があり、こんなに暖かに霞んでいる日でなければ奥秩父から西上州の山、浅間山までが一気に眺められそうです。
尾根道は落葉も少なくぐんぐんぐんと歩けば、320mピークの先に大きく岩肌が露出した個所があり、岩の窪みに祠か何かあってもおかしくないシチュエーション、けれどもこれは新しく崩れたところなのか探しても何もなくて残念。
330mピークにはしっかりした巻き道があり、標識もありますが、ここは縦走気分、枯葉に滑りながら少しの急登で天辺に立てばこちらにも小倉山への標識があって、ほんとうにありがたいことです。深い枯葉を蹴散らしながらコースに戻り、右手に植林地の道を少し進めば左右に綺麗に下り道の付いた峠へ出ます。花柄峠はこれなのかしら、それとも山頂の先の峠なのかしら。『桐生市史別巻』など見ているとこの辺りの麓は両側ともに興味深く、そのうち細やかに歩いてみたい場所です。

このすぐ上が小倉山。切り開かれた広い山頂に丁寧に作られた山名標と案内板があり、谷筋に白いものを残した赤城山が霞んで見えて、赤柴の山も吾妻山も輪郭が甘く溶けて、ほんとうに麗らかな日の里山は気持ちがいいけれど展望はいまひとつ。
この頃すっかり恒例になった熱い飲み物のために、えへん、わがストーブを会長にお披露目です。ほらほらこのコッヘルを見給へ、御覧このストーブの可愛いフォルム、なんて威張ってパンとスープの昼食。コースが短いので残念ながらアルコールは抜きで大休止です。
あれを思い出しこれを思い出し、笑ったりしんみりしたり話は尽きず、来月で代表幹事がいなくなって丸二年になるのですが、それが長いのか短いのかも判らず、話し足りない去り難い思いですがここの子になる訳には参らず山頂を後にします。

ここから崇禅寺の道は代表幹事が大好きだった道。ふたりとも連れられて何度か歩いています。緩やかな下りには急な所は全くなく、両側の赤松はほとんど松食い虫にやられてしまっていますが、倒木は切断されて歩きやすく整備されています。もう柔らかに芽生え始めた緑の混じる雑木の間をゆったりと辿り、右手には歩いてきた経塚山からの稜線がだんだん高く影を濃くして、下に隈笹が生い茂る遊歩道が見えてきたらもう崇禅寺の境内です。
ここからの山への入口の案内板には「小倉(花柄)山」と記されていて、会長と代表幹事が嬉しそうに笑う当会の花柄山山名票の前での写真を思い出し、ますますしみじみしてしまいます。
樹齢500年だというヒバの木を見上げ、開きはじめた白梅に鼻を近づけ、この頃俳人への道をひた走っている会長が投句するのに便乗して代行も拙い俳句を投句しました。来月もきっとたらたらと歩こうねと約して、さてわたくしはこれから何の道をひた走ればよいのやら。

まあそんな先のことはともかく、このコース、薮が元気になるまでは危険な場所も迷うような所もなく、アップダウンも少なくて軽い山散歩にお薦めです。軟弱な楚巒山楽会はこのあと車道をてくてくと駐車場所まで戻りましたが、たいていの方は当会メンバーのようにひ弱ではないはずで、でしたらもう少し距離を延ばして笹久保山の先まで、あるいは自然観察の森まではいかがでしょうか。あとふた月もして薮期になると、経塚山と小倉山直下の峠までは少しうるさくなりそうです。

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