新里散歩・雷電山

*代表幹事の記事を読み返していて、筆者にも行けそうな山を見つけました。ただ「とくに申し上げることもない」と紹介されていて、確かに概念図を見ると車で乗りつけて往復するだけじゃあっという間に済んでしまいそうな小さな山。このあたりは今や桐生市、市内史跡・寺社巡りと組み合わせればそこそこ歩けるんじゃないかしら。

新桐生駅から上電で新里に下車して、まずは駅の隣の赤城神社へ。と入る道はなぜかどれもよそ様の庭や駐車場で行き止まり、地図も持ってるしGPSもスイッチオン、準備に抜かりはないはずなのに初っ端から試行錯誤。結局神社を囲む急な土盛りを攀じ登って本殿裏から侵入する羽目になり、これは前途多難な模様です。
赤城神社は広い境内をもち、脇宮や石燈籠にはかなり古い年代が読めますが狛犬が新しくてちょっと残念。

ここから赤城山方向に歩いて次は武井廃寺跡と中塚古墳を目指すのですが、地図をぐるぐる回したり、あちこち見回してもどちらへ歩くべきかいまいち判らず、道路はひっきりなしに車が走ってなかなか渡れないというのに歩いている人などひとりもいない。ひゃあ!
取りあえず新しそうな市の施設を見つけだいたいの方向を確認して、この概念図はのっぺりしていますが実は登り坂(しかもほんとうは赤線はもっともっと錯綜している)、突き当たって左へ行って右、と教えられた通りに歩き始めたくせに鋪装道がつまらないのでつい細い道へ入っては自分がどちらを向いているのか判らなくなり、それでもようやく案内標識に行き着きました。

小高い丘の上にちんまりと盛り上がる古墳は7世紀のものといわれ、この一帯の豪族新川氏の墳墓、南を見下ろすと新川のあたりが一望でき正面には本日の山、雷電山がぽこんと見えます。見事だと誉められている内部の石組みは調査中で外からしか覗けませんが、頂上にぽつんと石祠があり、周囲の草が全部枯れているので本来のなだらかな形がよく判り、なかなか姿がいい。
古墳の左側には整備された忠霊塔、その先の柵に囲まれた少し小高い場所が武井廃寺跡です。入口には八五郎稲荷の鳥居が続き四・五段の石段を上がりきると中央に穴の刻まれた礎石がひとつ。お寺があったような広さはなく小さなお堂か大きなお墓があった跡ではないかしら。

緩やかにカーブする道に従って歩くとよく晴れた空に赤城山が平たく裾を伸ばし、もうこの辺りは裾野の一部ですからぺたんこではありますがなかなかいい眺めです。桑畑を縫う作業道を辿ったり、いくらかのアップダウンを繰り返していたら今日初めて道ゆく方にお会いして、次の目的地の善昌寺にだんだん近づいているのを確認します。道は一本違ったけど方角は大丈夫。
教わった通り山道めいた登り下りで目印のお地蔵さまに着き、その左手に山門が見えてきます。すっきりした山門前には古い石像や地蔵塔が並び、ここは赤城南麓では一番古いお寺だそうで、大同元年、最澄のお弟子が開いたと伝えられ、門を潜って本堂左には新田義貞の首塚といわれるどっしりした石塔が左右に家来でしょうか、いくつもの小さな石塔を従えて屋根に守られています。義貞公の首塚は京都や鎌倉にもあると聞きますがそれぞれ伝説があり、
もちろん八岐大蛇じゃあるまいし首がいくつもあったわけではありません。
戻って左へ行くと厚い藁屋根の薬師堂。

ここからは南へ。暫く進むと左手に空堀に囲まれ竹林と雑木に覆われた谷津城跡。ところがここの入口が判らない。散り残りの紅葉と枯葉の厚みを楽しみながら周囲をぐるりと歩きましたが、堀の向こうは竹柵に囲まれて突入できないし、柵が切れるあたりには住宅が並んで、帰ってから調べると個人のお庭を通るようにも思えるのですが、今日はもう午後、入口不明のまま雷電山へと急ぎます。

上電の踏切を渡ると右手に可愛く盛り上がる雷電山が近づいてきます。標高は200m、とはいえ既に160mあたりを歩いているのですから、確かに「とくに申し上げることもない」予感のする小さな、けれども丘ではなくこれは間違いなく山。
笠塔婆の標識の先に広い山道が緩やかに伸びています。轍が残る落葉の道は周りが竹薮に変わればすぐに頂上の雷電神社鳥居。しっかり外屋で覆われた本殿は裏に回るとちゃんと奥宮があり、周囲にも石祠がいくつかあります。小さな神社ですがご祭神をなんと11柱も刻んだ新しい石碑も建っていました。ああ、でも三角点が見つからなかったよお。
ここから北へ簡易舗装の道を進めば右手の枯木立の向こうに吾妻山から始まる桐生の山稜がずらずらっと袈裟丸山の稜線へと続き、正面には雲を纏い始めた赤城山。新里駅はこっち、と西に曲がってみると秩父連峰の奥に高い山々(北アルプス?)が霞み、正面左にはけっこう長い荒船山とその奥のごつごつした高い山塊(八ヶ岳?)、右手には西上州の山を前景に斜面を白くした浅間山がどすんと構え、これら全部の名前が自信を持って呼べたらどんなに楽しいでしょう。しかもそれが全部歩いた山だったら!
展望が良いせいかこちら側には新築の住宅がたくさん並んで、きーんと晴れた朝、窓から富士山や遠い白い山脈を眺めるのは素敵な目覚めに違いありません。

眺めを惜しみつつゆっくり下って、上電の架線を右手に見ながら最後の善龍寺。村指定重要文化財の石柱がある大きな宝篋印塔と趣ある山門を拝見。山門脇には最後の紅葉を背景に寒桜が可憐な花をつけ、冷たくなり出した風にはらはら散って、う〜むけっこう歩きましたよ。青面金剛が一体もなかったのはいささか残念でしたが満足。
鏑木川を越えて白くて可愛い新里駅に戻れば、電車は30分に一本、ベンチに座ってのんびり待ちましょう。
みなさま、車にばかり頼ってないでたまにはゆっくり新市内の散歩もぜひ。

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上電新里駅
赤城神社
古墳から見下ろす(雷電山遠望)
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只今立入禁止
武井廃寺の礎石
赤城山を見ながら歩く
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善昌寺山門
新田義貞公首塚
薬師堂
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雷電山へ
広々とした山道
雷電神社奥宮
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桐生の山稜が見渡せる
雲を纏って浅間山
善龍寺山門

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