女・男浅間山〜坊主山

*桐生に向かう東武電車が足利を過ぎてすぐ右側に小さな丘があって、そのてっぺんにやはり小さな建物が見えます。いつもあっという間に通り過ぎるのですがちょっと気になってました。駅前の地図では女浅間山、線路を挟んで南が男浅間山と名づけられています。

東武の足利市駅から河川敷を散歩しつつ上流へ歩き最初の橋が渡良瀬橋。このたもとの立派な石の鳥居をくぐり、鋪装されたゆったりした階段を上がります。川の向こうには織姫神社の派手な社殿が陽射しを受けて鮮やかに見え、西には赤城山がどっしり構えて、お彼岸が過ぎたというのに風はまだ赤城颪、冷た〜い。
階段が終ったところには六月一日のペタンコ祭用の受付があって小広くなっています。ペタンコ祭とは生まれた子どもの健やかな成長を願い額にご朱印をいただくもので、名前は今風な軽さですが400年近く歴史のあるお祭だとか。額に印をつけるのはキリスト教の聖水やヒンズー教のビンディーをちょっと連想させます。
江戸時代、足利の富士講はかなり盛んでしたが、北郷ではなぜか禁教の疑いを持たれて秘教化したと中島太郎「北の郷物語」にあり、同じ時代に伝わった講が一方では子育てにご利益ありとして、山そのものが足利富士とも呼ばれて長い歴史を持つのとは対照的です。女児は女浅間で、男児は男浅間で、という伝統があったそうですが現在はどちらでもよくなっているらしい。山の名前はそこからきているのでしょうか。
古い石碑や石塔のある山頂のお宮はなかなか立派で、絵馬に綴られる親の思いもぎっしり。お宮をぐるりと、まん丸のや細長い団栗を踏みながら歩いて、石段を下り鳥居に戻ります。

渡良瀬橋を後に舗装道を進み左折して東武線の高架を潜ると、右手に男浅間表参道の登り口が見えてきます。
ずいぶん昔に代表幹事と歩いて、犬に吠えられて怯えたお家はもう廃屋になっていました。九十九折りの参道は広々と緩やかで静かです。足利の町とその後の山稜を右に背中に何度も曲り、まだ冬枯の山肌をゆるゆると回りこんで尾根を目指します。この道は合目石や案内標識や図、ベンチも所々にあって地元の方のいい散歩道になっているようです。稜線に出たところにはどっしりした石碑が三つも並び、右手高く、青空に鳥居が聳える景観はなかなか味があります。
一部鋪装されてしまった階段を辿ると露岩を前景に色鮮やかな浅間宮。女浅間と比べると小さいのですが、空をバックに堂々としていかにも富士講のお宮という気がします。
ここからは360度の展望です。太田金山、八王子丘陵、川を挟んで小俣・桐生の山稜との間には高いところがまだ真っ白な赤城山が大きく翼を広げているように見える。幾重にも重なる渡良瀬川左岸の山並は高度を上げながらぐるっと真向かいの足利の奥へと連なり、だんだんに高度を下げて関東平野へ溶け込みます。南はすぐ側の八幡山が可愛くこんもりとしてそのずっと遠くまで春の陽を受けて、煌めく屋根、屋根、屋根。地平線にはおぼろに黒い秩父の山の影。

眺めを堪能した後は迂回路をとって石碑のある場所へ戻り南、上浅間山方向へ。進むとすぐに左への分岐があり胎内洞穴へ続きます。木花咲耶毘売が出現したといわれる洞穴は、かつての加持祈祷のための火で黒く焼け焦げた跡があり、奥には文殊菩薩が鎮座されるそうですが進入禁止になっていて、正面の石柱しか見えませんでした。身を屈めたら入れそうなのですが神さまに叱られそうな気が…。
分岐に戻り真直ぐな道を登り詰めると石尊大権現の石祠と三角点のある上浅間山頂。こちらは雑木の中で展望はあまりありません。
石宮を後に、常緑樹の緑が鮮やかな笹の間の細い道を下ると浅間社へのしっかりした南参道と合流します。しばらく辿れば富士の越の舗装道です。

この峠には浅間神社へ歩く方のための駐車スペースがあり、そこで尾根の登り口を探しましたが登れそうに見えていささか手強い。峠を東へ下ってすぐ右に坊主山への踏み跡を見つけました。笹の間に落葉が積もる細い道は真直ぐにだんだん傾斜を強め、正面に空が広がるところで右にぽんと出れば、小広くてまん丸い、如何にも坊主という名に相応しい山頂です。一面枯葉が散り敷いてうらうらと暖かく、枯葉に埋もれこんでしばし空を見上げて寝転がっていました。ぐるりが住宅街で道路も近いのにとても静か。
立ち木には文字が薄れてしまった山名票がかかって、枝は非常に煩いけれど樹間には上浅間山や足利の奥の山が見えます。
ここからの薄い踏み跡を南に辿りしばらく進みましたが薮と岩場に突き当たってしまいました。地図上に崖の印もあるので諦めて山頂へと戻り来た道を引き返し、富士の越からは東側へ下って、住宅地を抜け、相生山を一周して起点の足利の駅へと戻ります。

この山域は山辺独立丘陵と呼ぶそうです。独立愚連隊みたいで素敵じゃないか。
八幡山を登り残したので次は野州山辺駅起点で歩いてみよう。

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渡良瀬橋たもとの鳥居
対岸は織姫神社
線路をはさんで男浅間山
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浅間神社は歴史がある 表参道案内図
合目石
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広々とした道 山頂の鳥居 青空に浅間宮が映える
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八王子丘陵
桐生・小俣の山並と赤城山 足利の奥の山並がぐるりと
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八幡山と関東平野 上浅間山へ 富士講とくれば洞穴です
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一直線の登り
石尊の石祠が見えてくる 三角点もあります
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笹と常緑樹の下り
南参道と合わさる
富士の越の先に踏み跡
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空が開ける
枯葉がびっしりの山頂
薄れかけた坊主山山名票

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