赤地山〜谷山〜八幡神社

*前回の大合併で市の形がずいぶん変わり、もともと地図に弱い筆者にはもう桐生市の正しいかたちもお隣の市がどことどこであるのかもよく判らない日々。勿論それでさして困ることもないわけですが、山猫さんから前橋市と桐生市の境界の沢に滝を見に行きましょうなどとお誘いがあるとえ〜っ隣接してたんだ!などと恥を晒すことにはなります。
乙女の滝、ふふふ、なんと筆者に相応しいネーミング、いえその名の美しさではなく厚顔無恥なぬるさがですが。

赤城山、茶の木畑峠のすぐ西から流れ出す大猿川がその境界で右岸が前橋市、左岸が桐生市にあたります。かつて桐生川が県境であった頃、一本の橋のまん中からコンクリート製と土橋に別れていた、両側の自治体経済に大きな差があったので水害は貧乏で護岸が弱い菱側が大きかった、と近くのお年寄りが口惜しそうに言うのを何度も聞きましたが、ほんに境界とは薄情であることよ。
大猿山の家も親水公園も只今造成中の林道ももちろん経済力に勝る前橋市側にあり、その林道と所々に残る山道を小さな秋の花の名を教わったり、狐が胞子をつけて走り抜けたのでしょうか一直線に並ぶ茸を愛でて歩きます。午後から雨という予報の日で、森の木々は最後の緑にいくらか湿気を纏い、楓や楢の落葉は仄かに赤を滲ませたまま褐色になって微かに乾いた音を立て、玉紫陽花の残り花がいい色に褪せて、好き、こんな日のこんな道。

林道の終点で早い流れを渡り左岸の山道へ。本来ならもっと沢に沿って道があったのかしら、木の間に張られたロープを伝う道はまだ柔らかくて心許ありません。何度か渡渉すれば正面に滑り台ような流れが現われ、これには名はないようですが脇に梯子が設けられています。よじ登って少し進めばお目当ての乙女の滝。
そんなに高さはありませんが、真直ぐに落ちる水がまん中あたりで岩の窪みに当たり、60度ほど向きを変えて跳ね上がる不思議な形。正面からは優美な白い流れがくねり、その名に否やはありませんが、真横や少し上から眺めるとこれは乙女ではなくまるで小便小僧、水量が多い日でなかなかの勢いです。この滝が跳ねて落ちるあたりははて桐生市なのかしら、前橋市なのかしら。

この上に大猿の滝があるということでもう少し上へ。
けれども道が整備されているのは乙女の滝までで、左手に長いナメが見えたあたりで踏み跡は錯綜します。山猫さんは上へ向かう道を偵察に(これは茶の木峠からの尾根に行き着ける模様)、斑猫さんは沢に降りてルートを探り(筆者さえいなければ楽勝かも)、赤猫さんは植物を観察しながら落ち込むような下への踏み跡を辿り(これが正解でした)、筆者はひとりカメラ片手にのんびりと待ちます。
一度急降下の後、滑り易い岩を伝って右からの支流を渡り、灌木の間を潜り、綺麗に広がる長いナメを幾度か渡って、さてこれが大猿の滝なのかしら。

そういえば腕を伸ばして木を渡る猿のようでもありますね、なんて言いつつ綺麗な水とあたりに咲き乱れる小さな花々にすっかり堪能して一行はここで戻ったのですが、なんと、山野研究会に桐生みどりさんの大猿川の記事があるではありませんか。しかもすぐ上に見えていた崖から落ちるのが大猿の滝!ほんとにあと少しだけ登れば良かったのだ!落差10mのなかなかいい滝らしいのに〜。
己れの下調べ不足を棚に上げて悔しがってももう遅い。
来春、白ヤシオが咲く頃にきっと再訪して、しっかり大猿の滝を眺め、今度は銚子の伽藍まで歩きましょう、と山猫トリオと共に固く誓ったのでした。

(小便小僧じゃなくて)乙女の滝までは道もしっかりしているし、半日のハイキングとしてこれから紅葉を楽しむお薦めのコースであります。

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親水公園からの出発
シラネセンキュウ
林道を歩いたり
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大文字草
森の中に入ったり
玉紫陽花の花が残る
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道はロープが張ってある
アズマレイジンソウ
最初のナメ横には梯子が
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乙女の滝
上から見るとこんな
長いナメ(踏み跡分岐)
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突然草の中に看板が
沢を巻く山道
樹木のかたちにしばし見蕩れる
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セキヤノアキチョウジ
曙草
到着地には大猿もいた

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