熊糞山〜三境山

*2009/12/23
●山野研究会の桐生みどりさんから「熊糞山」は通称で正式な山名ではないとご指摘がありました。みどり市側の麓では地元の方は「白浜山東峰」と呼んで白浜山の一部と認識されているのだとか。白浜山が一時期登山者に「たぬき山」と呼ばれて、正しい山名が認識されるまで時間がかかったことを思えば、安易に通称を使うべきではありませんでした。お読みになる時、「熊糞山」と出てきたら(通称)と頭に付けてくださいませ。

桐生みどりさんご夫妻と行く初冬の熊糞山。きゃ、なんて色気のない響きでしょう。しかも雨上がりの早朝(ほんとはそうでもないんだろうけど代表幹事となら絶対に登り出さない時間)、積もった落葉は濡れていて、不死熊橋のあの岩ではきっと滑りそう。先月お誘いを受けた時はここを登ることを考えただけで高熱を発してしまったくらい臆病な代行に果たして本日のコース、全うできるや否や。

などと考える暇もなく、三境林道の分岐に車を停めればあっという間にこの岩の前に着いてしまいます。先を行く桐生みどりさんに手を伸ばしてもらって無事クリア。沢の左岸を高巻きしながら滑りやすい道を充分に注意して進めば、今年はどうしたことかもう薄いピンクのミヤマツツジが花をつけています。これから来る冬、どうやって過ごすつもりか心配してしまう。
今年の初夏来たときよりはずっと水量が少なく、それでも幾度か沢を渡る時は奥さまに手を貸していただいて、この季節いくら着替えを用意しているとはいえ水には落ちたくない。

右岸を高巻いて再び沢に下り着けば十四丁の丁目石、ここから左の沢筋へ。道らしい道はなく、ごろごろした石を踏み、鈴をりんりん、きゃあだのひぇだの悲鳴を上げながらじわじわ沢を詰めるのですから、賑やかです。何本か左右から沢が流れ込みますが、明るい雑木のある方がなんとなく気持ちいいので、主に左を選んで登ります。気温も上がり、落葉はもう乾きはじめている。
右手の樹木の間に太陽を反射してきらきら光る大石が現われ、炭焼き釜の跡をふたつ過ぎ、左手に複雑な割れ目を持つより大きな岩が出てきたあたりで、左手の尾根によじ登る。
主稜線に出れば頭を赤く塗られた「山」標石と林野庁の新しい見出標がお出迎えです。沢の登りに比べれば稜線は楽な歩き、右手根本方向に気持ちのいい尾根道を辿り、少しの登りで桐生市基準点No.144。この先のピークに左方向白浜山への分岐を示す古い小さな木の看板がついています。

ゆるやかな気分のいい尾根歩き、正面に真っ白な白根山が鮮やかなのに見とれて、見晴らしのいい伐採地で歩きいい枝尾根を辿らないように。左手の急斜面の何本かの雑木に大きく赤矢印が書いてあり、それに従ってずりずりと落葉の中を急降下します。右手には手前には足尾の山々、皇海山、庚申山はほんのり白く、奥に白根山を覗かせて日光の山並みが続き、やがてどっしりした雪化粧の男体山が女峰山を従えて、ここは絶景です。ただ、時々東の方向から銃声が聞こえるのがなんとなく不穏。

急斜面をひいひい言いながら登れば久々に見る宮標石!1054m峰です。再び急降下し、下ったのだから仕方ない、もう一度登り返せば熊糞山。かつては山頂看板があったと聞きますが、今はいくつかのテープが立ち木に巻かれているだけの静かな頂上です。
さて最初の計画では白浜山まで足を伸ばすつもりだったのですが、沢の登りで代行がもたもたしてたものだから、予定より時間が過ぎています。冬至直前の日の短い時期、下りも沢の予定なので昼食がてら行程の調整。温かい天ぷらうどんを御馳走になりながら、代行はみんなお二人におまかせで呑気なものです。
登りの沢が思ったより長かったので、白浜山は次回に回し、帰りは三境山から屋敷山沢を下ることに。三角点のあるあちらより、こっちの方が高いもんね、と前にちょこんと見えている白浜山に負け惜しみを言って戻ります。

主稜線に戻ってすぐ、前から女性を含む5人のパーティが。草加からお見えになった方たちで、朝車を停めた時下って行ったタクシーの乗客で、見覚えがありました。石鴨から三境山に登って「たぬき山」経由でみどり市に下るとか。今日お会いしたのはこの一組だけでした。「たぬき山」なんて言うあたりなんだか同年代っぽく懐かしい。

三境山への稜線で3つほど熊の痕跡を見ました。どれも結構新しそうで、気の毒なことにお腹をこわした熊さんも混じっているようです。色気はないけどこれを見ないと熊糞山へ行った甲斐がない。下に大きな鹿のヌタ場が見えたり、尾根道なのに猪の跡があったり、どうぞ動物たち、ハンターに見つからないように、ひとと共存できますようにと山の神さまにお願いしましょう。

木立の向うの兜のような三境山を目指します。快調に飛ばして、それまでなかった滑らかで均質な大きな石がごろごろし出せば、石祠と三角点のある三境山への登り、急登です。
この石は溶結凝灰岩、火山灰が熱で一度溶けてから固まった岩で、足尾の大谷石もこの仲間。静かで小広い頂上の南の斜面に、どういう具合か表面の一部に花が開いたような不思議な溶結凝灰岩が固まってあります。異質なものを抱き込んでいるのではないそうで、あるのもこの斜面だけのほんの一部、自然の造形測り難し。

この石の花群を真後に急降下、道形が全く見えない屋敷山沢を右に左に、倒木を跨いだり潜ったり、ただひたすら下ります。途中できれいに丸くくり抜かれた大きな岩が苔むしているのを観察し(石の花の部分が外れたような感じですがあるのはこのひとつだけ?)、巨大な炭焼き釜の跡を見て昔のひとの暮らしを想い、季節外れの大汗をかいているうちに三境林道のガードレールが見えてきます。
谷間の暮れ方は早いのに駐車場には県外の車がまだ2台停まっていて、暗くなり始めた帰路でちょっと心配しつつ、もう既に痛みだした膝を撫でつつ、面白い山行だったと大満足の一日でした。

(代表幹事代行)

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