赤城山の渓谷 1

                              桐生 みどり

赤城山で沢登りの対象として知られているのは粕川上流の銚子の伽藍だけである。地図を眺めても沢登りの対象になりそうな沢はほかにない。赤城の渓谷と滝を探訪した本(赤城山 花と渓谷)を見ても銚子の伽藍以外は見当たらない。もっともこの本の著者は遡行者(沢屋)ではなく、源流までの遡行を目的にしていない。桐生地域の渓谷は赤城南面から東面にあり、粕川水系の大猿川、渡良瀬水系の深沢川・川口川・鹿角川・高楢川・寒戸川・小黒川がある。

猿 川

赤城山で会った人から猿川に行った話を聞いた。猿川は長七郎山東面に源を発する川口川水系の沢である。沢登りの対象になるとのことだったので、半日暇ができた8月下旬に山仲間の野峰さんと遡行した。

標高810mの二の鳥居に駐車し、猿川に向かう林道を行く。三十分ほどで最終の治山堰堤(谷止工)に着いた。遡行を始めてすぐ右岸支流との分岐が5m滝になっている。さらに6mナメ滝が続く。いずれも直登し、次の7m滝は左から高巻く。3m滝を越えると15mナメ滝が現われる。谷川岳東黒沢のハナゲの滝を小さくしたような滝で、水流通しに行ける。

やがて左から枝沢を合わせる。水量は同じくらいだが、川床が低い右が本流である。左の沢には25mくらいの豪快な直瀑が懸かっている。下からは見えないが、記録によるとこの上にもさらに滝が続いており、三段の滝と名付けられている。おそらくこの滝は桐生市内で最大の滝だろう。右の本流を行くとすぐ5m滝が現われる。その先で二俣になり、右の本流に入ると5m滝となる。この滝を最後に標高1180m付近で水が消失し、急なガレに突き当たった。足場を選んで崩れ易いガレを登る。上部は岩塔が林立する崩壊地になっているので途中から右に分かれた溝を這い登った。稜線直下で登れなくなったので、樹林帯に取り付くとまもなく稜線に出た。標高1270m付近である。

稜線を右に下ると利平茶屋から三階(山崖)の滝遊歩道に出ると思われるが、左に稜線を登り上部を目指した。踏跡を登ると山腹工(崩壊防止のため山腹に擁壁を階段状に施工)の箇所に出た。ここを登り詰め、標高1400m付近で治山林道の終点に出た。終日雲に覆われて上部は霧雨が降っていたが、雨具を着けるほどのことはなかった。長七郎山の東山腹に付けられた林道を十分ほど辿ると鳥居峠に着いた。

猿川は実質1時間半ほどで遡行できる小さな沢であるが、滝が7つあってそれなりに楽しめる。ザイルは使用しなかったが、詰めのガレが多少悪いので一応補助ザイル程度は持参した方がいい。

二の鳥居(30分)猿川最終堰堤(1時間)15mナメ滝(20分)水源(20分)稜線(35分)林道終点(1時間30分)二の鳥居

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