鳴神山

桐生みどり

 鳴神山は旧桐生市を代表する名峰で、根本山から吾妻山に連なる脊稜山脈のほぼ中央に位置する。山頂部は岩が露出した双耳峰になっており、西峰を仁田山岳、東峰を桐生岳と称し、川内側が仁田山岳、梅田側が桐生岳をそれぞれ祀っている。山頂肩に雷神嶽神社がある。地元では単に嶽(岳・たけ)さん又は嶽様と呼んでいる。御嶽さんと同じく「さん」は山ではなく、尊称のさんである。雷神嶽は「らいしんだけ」ではなく、「なるかみだけ」であり、雷神嶽神社は「なるかみたけ神社」である。各地にある岳山(たけさん)信仰と同じく地元の信仰対象になっている。雷神嶽と表記することから雷神信仰に起因する名称と考えられる。座間峠東方にある「岳山」は鳴神山別名の「岳さん」を誤って付けたものであり、地元ではそのように呼んではいない。

 地図の標高980mは仁田山岳の標高で、桐生岳の981m(桐生市基準点)が最高点である。ただし、地図上から仁田山岳にあるはずの三角点は確認できず、鳴神山の三角点は行方不明である。

 鳴神山について山田郡誌には以下のとおり記載されている。(一部略字体に訂正)

鳴神山(雷神嶽)(嶽(たけ)山)

 梅田村大字高澤・川内村大字山田舊村上仁田山に跨る、所謂鳴神山脈の主峯とす。高さ九七九・七米頂上二峯に分れ、俗に二ツ嶽の稱あり。東峯は桐生嶽と稱し高澤に属し、西峯は仁田山嶽と稱し上仁田山に属す。山骨露出して突兀たり嶽山の名これより起る。東峯は稍高く頂上に雷神嶽神社を祀る、祠前に文化十年記銘の梵鐘を懸く、山巓視界展開し遠近の眺望頗る風致あり、蓋し桐生市附近第一の展望地なり。西峯にも同じく鳴神山神社を奉祠したるが明治四十年川内村大字山田赤城神社に合併せられ今廃社址の存するのみ、登路二條、東よりするものは高澤字大瀧よりし西よりするものは川内村大字山田字上仁田山字赤柴よりす。

上野国郡村誌山田郡高澤村、同郡山田村(明治十一年)の項には次のように記載されている。

(山田郡高澤村)

雷神嶽

 高三百七拾八丈、村ノ北ニ兀峙ス、西方山田村ニ属シ東方本村ニ属ス、山脈又南北綿亘ス、登路一條字大瀧ヨリス、廿壱町、頗ル険ナリ、渓水一條深壱尺五寸廣三尺、下注シテ高澤川ニ會ス、山中樹木生セス、頂上ニ雷神ノ小祠アリ、遠近ノ眺望頗ル風致アリ

雷神嶽神社

 雑社、社地東西十間南北五十一間、面積三百坪、村ノ北方ニアリ、祭神日本武尊、祭日五月八日

(山田村)

鳴神嶽

 高九十八丈三尺、村ノ北方ニアリ、嶺上ヨリ区分シ東方高澤村に属シ、南方上久方村ニ属シ北方小平ニ属ス、西方本村ニ属ス、山脈南北ニ分レテ蜿蜒起伏シ近隣ノ諸山ニ連瓦ス、山中樹木生セス、登路一條字赤芝ヨリ上ル、八町二拾間、頗ル嶮峻ナリ、渓水二條山田川ノ源タリ

登山道

 登山道は梅田側と川内側からそれぞれ二経路あり、北側の座間峠、南側の吾妻山方面からの縦走路を含めると六経路となる。

大滝口からコツナギ橋

 大滝口の道は鳴神山を代表する登山道だったが、作業道が付けられて元の登山道は破壊されてしまった。その作業道も最近の大雨で抉られて荒れている。最近の案内書で木品口と書かれているものがあるが、誤りである。木品は大滝の北隣の集落である。鳥居を潜って作業道に出て数分行くと大滝に着く。落差10mほどだが、梅田を代表する立派な滝で傍らに不動尊が祀られている。昔の登山道は失われてしまったので作業道を登る。

 不動尊まで登ると約六合目である。不動尊には「明治廿四年三月吉日」と刻まれている。沢を登り詰めると雷神嶽神社に出て、川内駒形登山道と合流する。鳥居が二つ並んであり、東側の鳥居を潜って登ると東峰の桐生岳に、西側の鳥居を潜って登ると西峰の仁田山岳に出る。仁田山岳から北に下ると15分ほどで鞍部に出る。ここから西に下ると赤芝、東に下るとコツナギ橋に下る。コツナギ沢沿いには山葵栽培の跡地が残っている。コツナギは骨ナギを連想するが、語源は子繋だという。車道を歩いて大滝口に戻れば周回できる。

  大滝口(50分)不動尊(30分)山頂(15分)北の鞍部(30分)コツナギ橋(20分)大滝口

吹上から鳴神山、吾妻山縦走

 桐生駅から川内・吹上までバスで行き、吾妻山に縦走した。大滝口登山道が荒れてしまった現在では駒形登山道が昔ながらの道で最も趣がある。吹上バス停から駒形登山口まで20分ほど、駒形から作業道を10分ほどで登山道になる。ここから10分ほどで沢が狭まり、道は巨岩が迫り出した沢の中を通っている。稜線近くの斜面は4月にはカタクリの群落が美しい。

 雷神嶽神社から桐生岳・仁田山岳を周回してから吾妻山に向かう。鳴神山から吾妻山まで8.4km、桐生の山を代表する縦走路である。低山歩きの愛好者だけでなく、最近は山岳マラソンの練習コースとしても利用されている。三峰山には石祠と御嶽山座王大権現の石像がある。金沢(かねざわ)峠と大形山の間が中間点である。吾妻山から水道山か吾妻公園を経て桐生市街地に下り、桐生駅に戻れば周回できる。

  吹上(20分)駒形(1時間20分)鳴神山(1時間30分)金沢峠(2時間)吾妻山(1時間)桐生駅

スペースがあまったので失礼しています。二段目右は楚巒山楽会代表幹事、20数年前の鳴神山登頂です。

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