桐生山野研究会

猿川・三段の滝

桐生みどり 

* 桐生市最大の滝をご存知だろうか。それは黒保根町の猿川源流にある三段の滝である。道がないため簡単に近付けないので一部の人を除いて殆ど知られていない。位置は赤城・長七郎山東面に源を発する猿川の源流にあり、落差など詳しいことは判らなかった。
 今回山仲間2人と訪ねて観察したところ、三段になって落下する見事な滝だった。GPSで落差を測定したところ、下段45㍍、中段25㍍、上段60㍍、合計130㍍の大滝であった。利根川源流部を除けば群馬県内でも有数の落差を誇る滝であり、桐生にこのような立派な滝があったことに感銘を覚えた。
 この滝は、利平茶屋森林公園の遊歩道を下流側から登って尾根上に出たところから遠望できる。ただし、遊歩道は山崖(三階)の滝近くで鎖場の梯子が壊れて通行禁止になっており、山崖の滝には下れないので注意。
 道が全くないので滝に近づくことができるのは登山に慣れている人だけである。滝の周囲は崖になっており、崖を迂回して高巻き、各段を観察した。特に上段の滝は周囲に崖が続き、危険な高巻きを強いられた。
* 最初、利平茶屋森林公園の遊歩道から猿川に下ろうとしたが、急斜面で下れず断念した。今回は山仲間のHさん、Iさんとともに猿川を下流から遡行して三段の滝を目指した。二の鳥居から遮断器のある工事用道路を辿って猿川に出て小滝が散在する猿川を遡る。新緑の沢筋は美しく、気持ちの良い沢歩きで三段の滝がかかる右岸支流合流点に着いた。
 下段を右から巻き始めたが、崖に阻まれたのでいったん本流に戻ってから右を高巻いた。この高巻きは意外に歩き易い斜面で踏跡らしきものも見受けられ、あっさり落口に出ることができた。下段は直瀑の上に下から見えないナメ滝(落差約十㍍)が続いており、予想外に落差があった。中段は直瀑で右から簡単に高巻くことができた。下段・中段とも右手崖下に岩洞がある。岩洞は溶岩流の崖から脆い部分が抜け落ちてできたものと思われる。
 上段は両側とも崖が続き、どちらから高巻くにしても大高巻きになる。遊歩道の尾根上から観察すると左側の崖が小さく、易しそうに見えたが、直下から見ると右側の方が与し易そうだったので右を高巻き始めた。崖の下を横断して観察したが、崖の切れている場所がなかったので木を手がかりに斜面の弱点を縫って崖を登り切った。沢筋に下り立った場所は三段の滝の上にある10㍍滝の上だった。この滝を下って落口に立ってみると上段は思いのほか落差が大きく、60㍍の大滝であった。
 10㍍滝の上は急に傾斜が緩くなり、大岩の先で二俣に分かれている。右に入るとすぐ水がなくなり、源頭になった。左俣もすぐ先で水が涸れている。付近はコバイケイソウの群落になっており、緩い沢筋を詰め上げて右に斜上すると治山の工事用道路に出た。崩壊した工事用道路を辿り、鳥居峠の手前から遊歩道を辿って利平茶屋に下り、二の鳥居に戻った。途中、峠の下りで尾根上の踏跡を辿って鳥居川に直接下りようと試みたが、末端が崖になっており、遊歩道に登り返した。
 三段の滝を遊歩道から遠望すると各段の間が離れているように見えるが、実際には3つの滝が連続しており、下段の滝下から上段の落口までの総落差は140㍍であった。下段と中段間、中段と上段間の標高差は合わせて10㍍に過ぎない。

2010年5月15日
二の鳥居(8:35)猿川(9:15)三段の滝下(10:15/10:25)三段の滝上(12:25)工事用道路(13:20)利平茶屋(15:05)二の鳥居(15:40)

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猿川7㍍滝
三段の滝遠望(利平茶屋遊歩道から)
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三段の滝上段・中段遠望 三段の滝下段
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高巻き中から下段
三段の滝中段
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三段の滝上段
高巻き中から上段
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三段の滝の上にある十㍍滝 源流の大岩

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