桐生山野研究会

冬の根本沢本流

桐生みどり 

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 根本山に源を発する根本沢は上流で根本山神社に向かう右俣と本流の左俣に分かれる。本流は赤城山を除く桐生の山で唯一沢登りが楽しめる沢である。無雪期に登ったことがあるが、冬の様子を探るため山仲間のHさんと二人で根本沢本流を目指した。
 不死熊橋から根本沢沿いの登山道を辿って二俣に着いた。二俣の篭堂跡から登山道が付いている右俣と分かれて本流の左俣に入る。落ち葉の堆積した上に数aの積雪が覆っていて膝まで沈む。歩き難いのでなるべく水流沿いを行く。しばらく行くと最初の3b滝となる。この滝は傾斜が緩いのでアイゼンを効かせて容易に越えられる。その先で8bの立派な氷瀑が現れた。一見易しそうだったが、ハーケンの準備がなく、中間支点なしで登るのは危険である。氷瀑の右側と左の岩を試みたが、どちらも行き詰まって時間を費やした。両岸とも険しいので高巻きは不可能である。結局、氷瀑を少し登ってピッケルを手掛りに右側の氷を登り切った。同行者は上から確保して左の岩場を登った。その上に全面結氷した15bの大滝が連続している。垂直ではないのでアイスクライミングの経験者なら簡単に登れると思うが、経験のない私たちには落差があるので中間支点なしで直登するのは不可能だ。ここは両岸とも岩場なので高巻きもできない。Hさんが先頭で木の根に中間支点を取って左の岩溝をルートに取り、悪い足場をかろうじて登り切って滝上に出た。このルートは悪いので、ここはアイスクライミングで滝を直登するのが最も安全だと思う。
 この先に3b、3b、2bの小滝が続くが、いずれも容易に直登できる。源流は開けており、雪の広い斜面を登り詰めて中尾根の上部に出た。無雪期に遡行した時は苦もなく登った記憶があるが、今回は二つの滝を越えるのに予想外の労力と時間を費やした。山頂で遅い昼食を食べて中尾根を下った。僅かだったが、登攀の気分を味わうことができ、満足できた山行であった。根本沢本流は桐生の低山にあってアルピニズムの片鱗に触れられる貴重な登路だと思う。

 2011年1月23日
 不死熊橋(1時間50分)二俣(2時間40分)山頂(1時間20分)三境林道分岐

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根本沢の道 二俣(籠堂跡)
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最初の3b滝 8b滝全景
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氷結した8b滝 氷結した15b大滝
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15b大滝登路 左の岩溝を登る 上部の3b滝
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源流の3b滝を越える 源流の登り

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