岳山(たけやま)です。岳山の名前をはじめて知ったのは、東武線新桐生駅前の桐生市の観光案内図でした。根本山の少し南に岳山の記載があり、桐生で一番高い(当時)根本山の名前は知っていましたが、初めて見た岳山という名前の字面は心に残りました。名前のついた経緯は分りませんが、岳と山の組み合わせはいかにも峻険な山容を思わせ、いつか登ろうと思っていました。鳴神山が嶽山と呼ばれていたのを知ったのはずっと後でした。
数年前、まだ山から離れていた時期に、ふと高木正史さんの『駅から登る山歩き』を手にとり、東村の座間から座間峠を経て岳山に登るガイドが載っていたので思わず購入してしまいました。少年期に初めて鳴神山に登ったときに高沢あたりで見た「至る座間峠」という道標がなぜか心に残っていて、高校一年生の夏休みに自転車でガタガタの林道を走り、暗(かったのかどうか)い沢沿いの道を座間峠へと辿りました。当時の景色、気色は全く覚えていないのですが、かすかな踏み跡を辿っていた時の心細さと峠についた時の高揚した気分(解放感、開放感)は心に焼き付きました。それが今も峠道を歩き続けている原点なのかも知れません。

唐突に話は変わってしまいますが、山を歩いている時に、頭の中で音楽が鳴っていることがあるでしょうか。私は一人で歩くことが多いので、爆風スランプのランナーとか、そのとき放映中の戦隊ものの主題歌かなんかを繰り返し、繰り返ししながら歩いていることがあります。童謡ふるさと館をスタート地点にすると、そうはいきません。「うさぎと亀」です。童謡ふるさと館では館外に大音量で童謡を流しています。童謡ふるさと館は多くの童謡を作詞した勢多郡東村花輪出身の石原和三郎の記念館で、うさぎと亀、金太郎、花咲かじじい、大黒様など結構子供の頃に覚えてしまった童謡を作詞しているので、防御しようとしても頭の中に入り込んできます。それが刷り込まれ登山中は頭の中は大音量の“もしもしかめよかめさんよ”です。ただで車を置かせていただくのですから仕方がないのですが、“もしもしかめよかめさんよ”で山を登りたくはありません。

童謡が耳に残らないようにしてそそくさと車を置き、道標に従って作業道を進みます。作業道が涸沢の道に変わり、道標に従い尾根に取付きます。気持ちの良い尾根歩きで座間峠に。広い峠は展望はありませんが寛ぐに格好の場所です。
峠からは急に細くなる踏み跡を辿ります。落葉の頃は尾根が広いので踏み跡をはずさないように。アップダウンを繰り返し長い登りで破壊された道標がある尾根上のT字路につきます。左は残馬山、三境山方面。右に登ると岳山です。楚巒山楽会の山名標を設置したこともあるのですが、数年で跡形もなくなりました。いまはオッサンの山旅さんの山名標があるようです。雑木に覆われた狭い山頂で展望といえるほどのものはありません。高木正史さんは“雑木に囲まれたヤブ山という感じが強く、あまり特徴もない。山の個性が感じられない。”と酷評されています。オッサンの山旅さんの感想も“雑木に覆われ視界は遮れお粗末で何処を歩いても遭遇するような何とも冴えない峰であります。”と芳しいものではありません。私は嫌いな山ではありません。小ぢんまりとしたなかなかの山頂だと思っています。岳山に愛の手を。
鍋足から座間峠までの道とあわせて紹介しようと思っていたのですが、賞味期限が過ぎてしまいそうなので、とりあえずこちら側だけ先にアップしました。

inserted by FC2 system